アリスズ
☆
「あっはっは、このちっこいのに惚れてるのか…あっはっはっはっは」
景子は、頭をがっしがっしとおさえられた。
アディマの叔母によって。
叔母といっても、景子の実年齢よりも若い姿を持っている。
年齢詐欺の実力が、ここでも炸裂していた。
ち、ちぢむ。
頭にのしかかる衝撃は、痛いというよりも重い。
こうやって豪快に笑い飛ばされたおかげで、景子はアディマの発言について、わりと気楽に流すことが出来た。
彼が、どれほど本気になってくれても、周囲にとっては笑い話レベルなのだ。
だが。
今日、アディマが刺されたかもしれないと聞いて、本当に心臓が止まるかと思った。
もし、彼が死んでいたら、自分はどうなっていただろうか。
心の多くを、アディマに奪われていることを、景子は嫌というほど自覚したのだ。
生きて、元気でいてくれたらいいや。
ただ、好きと欲が一致しない。
昔から身体にしみついている、あきらめ根性のせいだろうか。
どう考えても、うまくいかないよね──そう思うと、欲のフタがぱたっと閉じてしまう。
開けると、周囲を巻き込んで悪い結果になるから。
だから。
こんな風に、笑い飛ばされると楽だった。
ああ、箱を開けなくてよかった、と。
「で…そんなことを私に聞かせて、どうしようというのだ?」
爆笑をしまいこみながら、しかし、声にだけは笑みの響きを残しつつ、イデアメリトスの血を引く女性は──景子の頭を、ひじ掛けにした。
ずしっと体重がかかり、ますます彼女の身長を縮めようとする。
「いいえ、何も? ただ、お知らせしておきたかっただけです…あ、言い忘れてました…ケイコは、使えますよ」
挑発的な叔母の言葉に、あのアディマが更に挑発しかえすような響きの声で応戦する。
そして、右手を一度閉じて開くのだ。
「ほう…」
手の動きに、女性は目を吊り上げるように細めた。
その目が。
アディマから景子に向けられる。
「それは、面白い」
何を。
おいてけぼりの景子は、彼女のひじ掛けになったまま、二人のイデアメリトスを見上げるしか出来なかった。
「あっはっは、このちっこいのに惚れてるのか…あっはっはっはっは」
景子は、頭をがっしがっしとおさえられた。
アディマの叔母によって。
叔母といっても、景子の実年齢よりも若い姿を持っている。
年齢詐欺の実力が、ここでも炸裂していた。
ち、ちぢむ。
頭にのしかかる衝撃は、痛いというよりも重い。
こうやって豪快に笑い飛ばされたおかげで、景子はアディマの発言について、わりと気楽に流すことが出来た。
彼が、どれほど本気になってくれても、周囲にとっては笑い話レベルなのだ。
だが。
今日、アディマが刺されたかもしれないと聞いて、本当に心臓が止まるかと思った。
もし、彼が死んでいたら、自分はどうなっていただろうか。
心の多くを、アディマに奪われていることを、景子は嫌というほど自覚したのだ。
生きて、元気でいてくれたらいいや。
ただ、好きと欲が一致しない。
昔から身体にしみついている、あきらめ根性のせいだろうか。
どう考えても、うまくいかないよね──そう思うと、欲のフタがぱたっと閉じてしまう。
開けると、周囲を巻き込んで悪い結果になるから。
だから。
こんな風に、笑い飛ばされると楽だった。
ああ、箱を開けなくてよかった、と。
「で…そんなことを私に聞かせて、どうしようというのだ?」
爆笑をしまいこみながら、しかし、声にだけは笑みの響きを残しつつ、イデアメリトスの血を引く女性は──景子の頭を、ひじ掛けにした。
ずしっと体重がかかり、ますます彼女の身長を縮めようとする。
「いいえ、何も? ただ、お知らせしておきたかっただけです…あ、言い忘れてました…ケイコは、使えますよ」
挑発的な叔母の言葉に、あのアディマが更に挑発しかえすような響きの声で応戦する。
そして、右手を一度閉じて開くのだ。
「ほう…」
手の動きに、女性は目を吊り上げるように細めた。
その目が。
アディマから景子に向けられる。
「それは、面白い」
何を。
おいてけぼりの景子は、彼女のひじ掛けになったまま、二人のイデアメリトスを見上げるしか出来なかった。