アリスズ
☆
領主の屋敷からほどなくして、荷馬車は別の屋敷へと入っていった。
アディマの叔母であるロジューは、この町に住んでいるようだ。
「さあ、ケールリとレップスを離せ。お前も、どこなりと好きに走るがいい」
ロジューは荷馬車からひらりと降りながら、大きな声で御者に命じた。
すぐさま馬は離され、待っていたかのように2頭は広い敷地を駆け回り始める。
ええと。
いま、馬の後に告げられた『お前』というのは、景子のことなのだろう。
まさに、馬と同列に扱われている。
まあ、自由にしていいってこと、かな。
景子は、おそるおそる荷馬車から降りて、周囲を見回した。
屋敷の脇に、濃い緑に繁る、ワイルドなジャングルが目に入る。
ジャングルとしか表現出来ないのは、この中暑季地域にきて、見たことのない植物が、好き放題に伸びているからだ。
景子は、足が勝手にそこへ向かって行くのを止められなかった。
そのジャングルは、外側の植物の力がとても弱い。
しかし、内側に進むに連れ、生命力溢れる力を放っている。
そして。
一歩進むごとに、草を分け入るごとに、熱と湿度が増してゆく。
一体、どうやって。
その答えは、ジャングルの中心にあった。
巨大な大なべで、ぐらぐらと湯を沸かしていたのだ。
火の番をしている汗だくの男が、突然の訪問者である景子にぎょっとした。
あー、あはは。
景子は、おかしくなって笑ってしまった。
何という、力技。
南国の植物を育てるのに、こうしてずっと火を焚いているというのか。
すさまじい贅沢の仕方だった。
しかし、あの豪快なロジューらしい。
彼女は、南の植物がきっと気に入ってしまったのだ。
それを手元に置きたいと考え、そして実行した。
方法こそ乱暴であれど、人のこうした無茶な行動が、だんだんと進化するヒントになってゆくのだろう。
熱と湿度に包まれながら、景子は少しだけ、ロジューのことが好きになったのだった。
領主の屋敷からほどなくして、荷馬車は別の屋敷へと入っていった。
アディマの叔母であるロジューは、この町に住んでいるようだ。
「さあ、ケールリとレップスを離せ。お前も、どこなりと好きに走るがいい」
ロジューは荷馬車からひらりと降りながら、大きな声で御者に命じた。
すぐさま馬は離され、待っていたかのように2頭は広い敷地を駆け回り始める。
ええと。
いま、馬の後に告げられた『お前』というのは、景子のことなのだろう。
まさに、馬と同列に扱われている。
まあ、自由にしていいってこと、かな。
景子は、おそるおそる荷馬車から降りて、周囲を見回した。
屋敷の脇に、濃い緑に繁る、ワイルドなジャングルが目に入る。
ジャングルとしか表現出来ないのは、この中暑季地域にきて、見たことのない植物が、好き放題に伸びているからだ。
景子は、足が勝手にそこへ向かって行くのを止められなかった。
そのジャングルは、外側の植物の力がとても弱い。
しかし、内側に進むに連れ、生命力溢れる力を放っている。
そして。
一歩進むごとに、草を分け入るごとに、熱と湿度が増してゆく。
一体、どうやって。
その答えは、ジャングルの中心にあった。
巨大な大なべで、ぐらぐらと湯を沸かしていたのだ。
火の番をしている汗だくの男が、突然の訪問者である景子にぎょっとした。
あー、あはは。
景子は、おかしくなって笑ってしまった。
何という、力技。
南国の植物を育てるのに、こうしてずっと火を焚いているというのか。
すさまじい贅沢の仕方だった。
しかし、あの豪快なロジューらしい。
彼女は、南の植物がきっと気に入ってしまったのだ。
それを手元に置きたいと考え、そして実行した。
方法こそ乱暴であれど、人のこうした無茶な行動が、だんだんと進化するヒントになってゆくのだろう。
熱と湿度に包まれながら、景子は少しだけ、ロジューのことが好きになったのだった。