アリスズ
☆
そういえば。
景子は、きょろきょろした。
温室の件で、何度かロジューの部屋に呼び出されているのだが、『それ』らしい気配はない。
「何だ?」
彼女の態度に、この屋敷の主はいつも通り、上から見下ろす声を出す。
ソファに座っているはずなのに、どうしてもそう思えてしまうのが不思議だ。
「あ、いえ…」
個人的な興味と質問だったので、それを言うのははばかられた。
どこに地雷があるか分からないのだ、この女性は。
「気持ち悪いな。さっさと言え」
だが。
がぶりと、食らいついたら離さない。
景子は、既に自分の首にロジューが食らいついているのが分かって観念した。
「いえ…旦那さんはいらっしゃらないのかなと…素朴な疑問で」
アディマの叔母である。
たとえ、本当に実年齢が若いにしても、イデアメリトスの旅を成功させたという彼女に、何の縁談も来ないのはおかしく思ったのだ。
「結婚などしてない」
だが、ズバァっと一刀両断された。
「ええー!?」
意外すぎて、景子はその驚きをつい音にしてしまう。
「イデアメリトスの男と結婚するなんて、うんざりでな」
テーブルに置かれていた、ジャングルで実っていた南国の果物をひっつかむと、忌々しさを込めたようにかぶりつく。
いや、うんざりという気分で許されることなのだろうか。
「だが、私に娘がいなくてよかったと、お前は思わないのか?」
は?
突然振られた話の展開に、景子の脳はついていけなかった。
「もし、私に娘がいたら…間違いなく、あの愚甥の嫁候補筆頭になっていたからな」
くくくくく、と。
底意地の悪い瞳が、彼女に向く。
ええと。
ロジューの子ならば、アディマの従姉妹になる。
彼女の言い方からすると、イデアメリトスは、イデアメリトスと結婚するしきたりなのだろう。
そこに、景子が出てくる理由と言えば。
アディマの言う、景子伴侶説を丸呑みにしているということ。
わ、笑い飛ばしたんじゃないんですかぁぁぁ!
そういえば。
景子は、きょろきょろした。
温室の件で、何度かロジューの部屋に呼び出されているのだが、『それ』らしい気配はない。
「何だ?」
彼女の態度に、この屋敷の主はいつも通り、上から見下ろす声を出す。
ソファに座っているはずなのに、どうしてもそう思えてしまうのが不思議だ。
「あ、いえ…」
個人的な興味と質問だったので、それを言うのははばかられた。
どこに地雷があるか分からないのだ、この女性は。
「気持ち悪いな。さっさと言え」
だが。
がぶりと、食らいついたら離さない。
景子は、既に自分の首にロジューが食らいついているのが分かって観念した。
「いえ…旦那さんはいらっしゃらないのかなと…素朴な疑問で」
アディマの叔母である。
たとえ、本当に実年齢が若いにしても、イデアメリトスの旅を成功させたという彼女に、何の縁談も来ないのはおかしく思ったのだ。
「結婚などしてない」
だが、ズバァっと一刀両断された。
「ええー!?」
意外すぎて、景子はその驚きをつい音にしてしまう。
「イデアメリトスの男と結婚するなんて、うんざりでな」
テーブルに置かれていた、ジャングルで実っていた南国の果物をひっつかむと、忌々しさを込めたようにかぶりつく。
いや、うんざりという気分で許されることなのだろうか。
「だが、私に娘がいなくてよかったと、お前は思わないのか?」
は?
突然振られた話の展開に、景子の脳はついていけなかった。
「もし、私に娘がいたら…間違いなく、あの愚甥の嫁候補筆頭になっていたからな」
くくくくく、と。
底意地の悪い瞳が、彼女に向く。
ええと。
ロジューの子ならば、アディマの従姉妹になる。
彼女の言い方からすると、イデアメリトスは、イデアメリトスと結婚するしきたりなのだろう。
そこに、景子が出てくる理由と言えば。
アディマの言う、景子伴侶説を丸呑みにしているということ。
わ、笑い飛ばしたんじゃないんですかぁぁぁ!