アリスズ
☆
「愚甥から、呼び出しが来てな」
叔母を呼び出すとは、いい身分だ。
荷馬車の中で、ロジューは想像上の甥を指で爪弾くような仕草をしてみせた。
アディマが!?
景子の心臓は、ぴょこんと一度跳ねる。
この荷馬車に景子も積み込まれたということは、彼に会えるということだ。
嬉しいなあ。
ついつい、彼女は顔を緩めてしまった。
そんな景子のしまりのない顔を。
じーーー。
ロジューの、強いまなざしが見ている。
はっと我に返り、景子は口元を引き締めた。
「イデアメリトスに会うと聞いて、へらへら笑ってるのは、お前くらいだな。大体、私もイデアメリトスだぞ」
景子が、全然かしこまったり緊張したりしないことを、どうもロジューは怪訝に覚えているようだ。
いや、緊張しないわけじゃないけど。
慣れというものは恐ろしいもので。
自分に対して、怖いことや嫌なことをしてこない相手だと分かると、安心するだけだ。
それに。
前に、アディマが言っていたことを、景子はしっかりと噛みしめた。
彼女にとって、本当にイデアメリトスというものは、拘束力を持っていないのだ。
魂に、それが刻まれていない、と言えばいいか。
だから、この国で偉い人だとは分かるのだが、偉さの現実味がわかなかった。
「まあいい…ところで、お前も魔法を使えると聞いたが」
突然の話の転換に、景子はすぐについていけなかった。
アディマは、そんなことまで彼女に話したというのだろうか。
「魔法…なのかなぁ…」
景子は、ロジューを見た。
美しい輝きを放つ、イデアメリトスの光が見える。
髪が年齢を止めるせいか、その若々しい光には翳りがなかった。
「もし、お前が生まれながらにしてそれを持っているというのならば…きちんと磨くのだ。磨かねば、魔法などただの芸と変わらぬのだからな」
あいたたたたた。
何故か、ロジューの言葉は──痛かった。
「愚甥から、呼び出しが来てな」
叔母を呼び出すとは、いい身分だ。
荷馬車の中で、ロジューは想像上の甥を指で爪弾くような仕草をしてみせた。
アディマが!?
景子の心臓は、ぴょこんと一度跳ねる。
この荷馬車に景子も積み込まれたということは、彼に会えるということだ。
嬉しいなあ。
ついつい、彼女は顔を緩めてしまった。
そんな景子のしまりのない顔を。
じーーー。
ロジューの、強いまなざしが見ている。
はっと我に返り、景子は口元を引き締めた。
「イデアメリトスに会うと聞いて、へらへら笑ってるのは、お前くらいだな。大体、私もイデアメリトスだぞ」
景子が、全然かしこまったり緊張したりしないことを、どうもロジューは怪訝に覚えているようだ。
いや、緊張しないわけじゃないけど。
慣れというものは恐ろしいもので。
自分に対して、怖いことや嫌なことをしてこない相手だと分かると、安心するだけだ。
それに。
前に、アディマが言っていたことを、景子はしっかりと噛みしめた。
彼女にとって、本当にイデアメリトスというものは、拘束力を持っていないのだ。
魂に、それが刻まれていない、と言えばいいか。
だから、この国で偉い人だとは分かるのだが、偉さの現実味がわかなかった。
「まあいい…ところで、お前も魔法を使えると聞いたが」
突然の話の転換に、景子はすぐについていけなかった。
アディマは、そんなことまで彼女に話したというのだろうか。
「魔法…なのかなぁ…」
景子は、ロジューを見た。
美しい輝きを放つ、イデアメリトスの光が見える。
髪が年齢を止めるせいか、その若々しい光には翳りがなかった。
「もし、お前が生まれながらにしてそれを持っているというのならば…きちんと磨くのだ。磨かねば、魔法などただの芸と変わらぬのだからな」
あいたたたたた。
何故か、ロジューの言葉は──痛かった。