アリスズ
□
「面白い娘だな」
叔母の一言目が、それだった。
アディマとロジューが二人きりになった、応接室でのこと。
彼が、わざわざ叔母を呼びたてたのである。
表向きは、まもなく出立するという挨拶のため。
叔母の乱暴な魔法のおかげで、ダイは信じられない速さで回復をしている。
本来ならば、もう少し休息を取らせたかったのだが、本人がどうしても出立したいと言い張るのだ。
自分の失態で、旅が遅れるのが耐えられないのだろう。
「そうですか…」
とりあえず、アディマはほっとした。
気性の荒い叔母に、どうやらケイコは気に入られたようだ、と。
彼女を預けたのは、一人でも多い味方を手に入れるためだった。
味方になってくれ。
そんな言葉で、心を動かすイデアメリトスはいない。
ケイコを直接放り込んで、本人の意思で気に入ってもらわなければならなかった。
だからこそ、アディマは叔母の暴挙を止めなかった。
それどころか、一番最初にロジューを煽ったのは、彼自身なのだ。
「いま、うちでは温かい部屋なるものを作っているぞ」
くくく。
何かを思い出したらしく、叔母は心底楽しそうに笑う。
珍しい物好きの彼女の、好奇心を満足させるものを、ケイコが出してきたようだ。
「僕が、都に帰ったら、祭りが始まります」
彼女の存在を、ゆっくりと噛みしめながら、アディマは本題を口にした。
「お前が死ななければ、な」
さっくりと、叔母は斬りつけてくる。
前回の油断という傷口を、容赦なくえぐってくるのだ。
「死にませんよ…それで、祭りになったら…叔母上様も、都へいらっしゃいますよね?」
叔母の一撃を、さらりと蹴り飛ばしながら、アディマはゆっくりと問いかけた。
おそらく、来るとは分かってはいるのだが、念を押したかったのだ。
すると。
叔母は、糸目になってアディマを見るではないか。
「ケーコなら…温かい部屋が出来るまでは、都に返さんぞ」
彼の意図など──すっかりお見通しだと言わんばかりに。
「面白い娘だな」
叔母の一言目が、それだった。
アディマとロジューが二人きりになった、応接室でのこと。
彼が、わざわざ叔母を呼びたてたのである。
表向きは、まもなく出立するという挨拶のため。
叔母の乱暴な魔法のおかげで、ダイは信じられない速さで回復をしている。
本来ならば、もう少し休息を取らせたかったのだが、本人がどうしても出立したいと言い張るのだ。
自分の失態で、旅が遅れるのが耐えられないのだろう。
「そうですか…」
とりあえず、アディマはほっとした。
気性の荒い叔母に、どうやらケイコは気に入られたようだ、と。
彼女を預けたのは、一人でも多い味方を手に入れるためだった。
味方になってくれ。
そんな言葉で、心を動かすイデアメリトスはいない。
ケイコを直接放り込んで、本人の意思で気に入ってもらわなければならなかった。
だからこそ、アディマは叔母の暴挙を止めなかった。
それどころか、一番最初にロジューを煽ったのは、彼自身なのだ。
「いま、うちでは温かい部屋なるものを作っているぞ」
くくく。
何かを思い出したらしく、叔母は心底楽しそうに笑う。
珍しい物好きの彼女の、好奇心を満足させるものを、ケイコが出してきたようだ。
「僕が、都に帰ったら、祭りが始まります」
彼女の存在を、ゆっくりと噛みしめながら、アディマは本題を口にした。
「お前が死ななければ、な」
さっくりと、叔母は斬りつけてくる。
前回の油断という傷口を、容赦なくえぐってくるのだ。
「死にませんよ…それで、祭りになったら…叔母上様も、都へいらっしゃいますよね?」
叔母の一撃を、さらりと蹴り飛ばしながら、アディマはゆっくりと問いかけた。
おそらく、来るとは分かってはいるのだが、念を押したかったのだ。
すると。
叔母は、糸目になってアディマを見るではないか。
「ケーコなら…温かい部屋が出来るまでは、都に返さんぞ」
彼の意図など──すっかりお見通しだと言わんばかりに。