アリスズ
□
アディマは、西翼へと駆けつけた。
魔法の身を飛ばす余裕などなく、自ら叔母の部屋の扉を開けたのだ。
「ケイコ!」
叔母のベッドに横たわるのは、小さい彼女の身体。
「静かにしろ」
そんな彼女の額に、死の光を与えているのは叔母だった。
灰色の死が、ケイコの肌を限りなく白くしてゆく。
「何を…ケイコに何をしているんですか!」
駆け寄ろうとする彼に、もう片手の金の光を見せ付けるように掲げる。
「毒を抜いている…黙ってそこにいろ」
ああ。
叔母の言葉に、アディマはよろけた。
側に控えていたダイに、支えられてしまう有様だ。
毒が、ケイコの身体を蝕んでいるというの事実が、ひどい重さを伴ってアディマにのしかかってきたのである。
「操られて…いたんですか?」
恐れていたことが、現実に起きてしまった。
「毒の石なら、そのテーブルの上にある…水に溶ける遅く効く毒だ。ケーコの口の中に仕込まれていた」
叔母は、忌々しい唇で、アディマに告げる。
「おそらく、ケイコに毒見をすると言わせ、杯に毒を移す気だったのだ…そして、明日の朝あたりに、二人仲良く太陽に召される、という計算だったのだろうな」
水に溶ける毒。
唾液で溶け、少しずつケイコの身体に流れ込む。
「操られていたため、目も焼いた…二、三日は何も見えないだろう。まあ、生きていられれば、の話だがな」
金の炎を右手で燃え上がらせながら、しかし、その手は血で滲んでいる。
噛まれた跡らしきものも、いくつも残っていた。
毒の口で、噛まれたに違いない。
それを、金の炎を灯すことで自らを治療しながら、ケイコの治療もしているのだ。
「私もやりましょう」
こんなところで、打ちひしがれている場合ではない。
アディマは、足にしっかりと力を込めて、彼女らの方へと歩きだす。
「ああ、是非そうしろ…両手に太陽を灯せ」
ロジューの叱咤にも似た声に、アディマは二本の髪を引き抜いた。
太陽よ。
両手に金の火を灯す。
この愛しきものを──どうか救いたまえ。
アディマは、西翼へと駆けつけた。
魔法の身を飛ばす余裕などなく、自ら叔母の部屋の扉を開けたのだ。
「ケイコ!」
叔母のベッドに横たわるのは、小さい彼女の身体。
「静かにしろ」
そんな彼女の額に、死の光を与えているのは叔母だった。
灰色の死が、ケイコの肌を限りなく白くしてゆく。
「何を…ケイコに何をしているんですか!」
駆け寄ろうとする彼に、もう片手の金の光を見せ付けるように掲げる。
「毒を抜いている…黙ってそこにいろ」
ああ。
叔母の言葉に、アディマはよろけた。
側に控えていたダイに、支えられてしまう有様だ。
毒が、ケイコの身体を蝕んでいるというの事実が、ひどい重さを伴ってアディマにのしかかってきたのである。
「操られて…いたんですか?」
恐れていたことが、現実に起きてしまった。
「毒の石なら、そのテーブルの上にある…水に溶ける遅く効く毒だ。ケーコの口の中に仕込まれていた」
叔母は、忌々しい唇で、アディマに告げる。
「おそらく、ケイコに毒見をすると言わせ、杯に毒を移す気だったのだ…そして、明日の朝あたりに、二人仲良く太陽に召される、という計算だったのだろうな」
水に溶ける毒。
唾液で溶け、少しずつケイコの身体に流れ込む。
「操られていたため、目も焼いた…二、三日は何も見えないだろう。まあ、生きていられれば、の話だがな」
金の炎を右手で燃え上がらせながら、しかし、その手は血で滲んでいる。
噛まれた跡らしきものも、いくつも残っていた。
毒の口で、噛まれたに違いない。
それを、金の炎を灯すことで自らを治療しながら、ケイコの治療もしているのだ。
「私もやりましょう」
こんなところで、打ちひしがれている場合ではない。
アディマは、足にしっかりと力を込めて、彼女らの方へと歩きだす。
「ああ、是非そうしろ…両手に太陽を灯せ」
ロジューの叱咤にも似た声に、アディマは二本の髪を引き抜いた。
太陽よ。
両手に金の火を灯す。
この愛しきものを──どうか救いたまえ。