アリスズ
☆
扉が開く。
それは、本当に微かに。
微かに開けられた気配に、しかし、景子はうまく反応はできなかった。
声も出せない、目も見えない、身体も動かせない状態なのだ。
ただ、陸揚げマグロのように、ベッドに横たわっているしか出来ない。
ダイは。
ダイは、大丈夫だろうか。
部屋の前に、どすんと座っただろうあの男も、イデアメリトスではない普通の男だ。
彼が、操られなければいいのだが。
そう。
景子が、祈った次の瞬間。
「ああ、そうか…お前だったか」
ロジューの声が──痛切に響いた。
「……!」
空気が、強く震える。
「護衛は、眠らせたか…よい手並みだな」
「……っ!」
声にならない悲鳴があがり、人の倒れる音が響く。
「言い訳は出来ないぞ。ここは、私の部屋ではなく、従者の部屋だ。そこに護衛を眠らせて、ノッカーも鳴らさずに入ったのだ…何一つ、お前に言い訳など出来ない」
苦しげな、ロジューの声。
そうだ。
捕まえた相手は、同じイデアメリトスの者。
犯人が分かったとしても、手離しで喜べるものではない。
「さあ…髪を抜けないように戒めたぞ…共に兄者のところへ行こうではないか」
その言葉に、甲高い叫び声がかぶる。
「いやぁ! それだけは、やめて!」
聞き覚えのある、高い声。
「駄目だ…カナルディシーデンファラム。お前は、やってはならないことをした」
あぁ。
動けないまま、景子はアディマを思った。
これから、妹を処罰しなければならない、アディマのことを。
扉が開く。
それは、本当に微かに。
微かに開けられた気配に、しかし、景子はうまく反応はできなかった。
声も出せない、目も見えない、身体も動かせない状態なのだ。
ただ、陸揚げマグロのように、ベッドに横たわっているしか出来ない。
ダイは。
ダイは、大丈夫だろうか。
部屋の前に、どすんと座っただろうあの男も、イデアメリトスではない普通の男だ。
彼が、操られなければいいのだが。
そう。
景子が、祈った次の瞬間。
「ああ、そうか…お前だったか」
ロジューの声が──痛切に響いた。
「……!」
空気が、強く震える。
「護衛は、眠らせたか…よい手並みだな」
「……っ!」
声にならない悲鳴があがり、人の倒れる音が響く。
「言い訳は出来ないぞ。ここは、私の部屋ではなく、従者の部屋だ。そこに護衛を眠らせて、ノッカーも鳴らさずに入ったのだ…何一つ、お前に言い訳など出来ない」
苦しげな、ロジューの声。
そうだ。
捕まえた相手は、同じイデアメリトスの者。
犯人が分かったとしても、手離しで喜べるものではない。
「さあ…髪を抜けないように戒めたぞ…共に兄者のところへ行こうではないか」
その言葉に、甲高い叫び声がかぶる。
「いやぁ! それだけは、やめて!」
聞き覚えのある、高い声。
「駄目だ…カナルディシーデンファラム。お前は、やってはならないことをした」
あぁ。
動けないまま、景子はアディマを思った。
これから、妹を処罰しなければならない、アディマのことを。