アリスズ
□
「カナルディシーデンファラム…」
アディマは、肩を落とした。
目の前には、父と叔母。
そして──戒められた妹。
まだ小さい身体だが、彼女には長い髪がある。
小さくとも、イデアメリトスの子は魔法は使えるのだ。
しくしくと泣き続ける妹に、アディマはどんな問いかけも出来ずにいた。
「馬鹿娘が…」
ふぅと、イデアメリトスの長が苦悶の息を漏らす。
彼にとっても、この事件の真相は胸を痛めるものだろう。
「お兄様がいけないのよ! お兄様が、叔母上様を第一候補なんかにするから!」
泣き崩れながら、ヒステリックに妹は叫んだ。
とても、姿と見合う叫びではない。
カナルディは、十六歳。
十六歳の叫びにしても、それはヒステリック過ぎた。
「他の、髪を伸ばせないイデアメリトスにすればよかったのに! そうしたら、簡単に殺せたのに!」
だが。
十六歳の娘とは思えない、恐ろしい言葉を吐き出すのだ。
「何故に…カナルディシーデンファラムよ。兄の妃候補を、殺そうなどと思うのだ」
苦悶の瞳を閉じながら、イデアメリトスの長は問う。
妹の瞳が。
涙に濡れたカナルディの瞳が、強い金の光を放って父親を見上げる。
「だって…」
その唇の端が、釣り上がるように笑う。
「だって…お兄様の結婚相手が全部いなくなったら…私に順番が回ってくるでしょう? 親が半分違って、結婚したことがあるじゃない!」
その場の三人全てが、言葉を失った。
確かに、カナルディの母親とアディマの母親とは違う。
三人の子を産んだ母は、太陽に召されたのだ。
次の父の妻は、カナルディを産んで──そして太陽に召された。
近親婚のせいで、身体が弱い者が多いせいだろう。
その弱りかけた血を。
更に濃くしようと思っていた娘が、ここにいたのだ。
カナルディは、彼をただ兄として、慕っていたわけではなかったのである。
「しかるべき処分を…」
それを、父に向かって口にすることしか──アディマにはできなかった。
「カナルディシーデンファラム…」
アディマは、肩を落とした。
目の前には、父と叔母。
そして──戒められた妹。
まだ小さい身体だが、彼女には長い髪がある。
小さくとも、イデアメリトスの子は魔法は使えるのだ。
しくしくと泣き続ける妹に、アディマはどんな問いかけも出来ずにいた。
「馬鹿娘が…」
ふぅと、イデアメリトスの長が苦悶の息を漏らす。
彼にとっても、この事件の真相は胸を痛めるものだろう。
「お兄様がいけないのよ! お兄様が、叔母上様を第一候補なんかにするから!」
泣き崩れながら、ヒステリックに妹は叫んだ。
とても、姿と見合う叫びではない。
カナルディは、十六歳。
十六歳の叫びにしても、それはヒステリック過ぎた。
「他の、髪を伸ばせないイデアメリトスにすればよかったのに! そうしたら、簡単に殺せたのに!」
だが。
十六歳の娘とは思えない、恐ろしい言葉を吐き出すのだ。
「何故に…カナルディシーデンファラムよ。兄の妃候補を、殺そうなどと思うのだ」
苦悶の瞳を閉じながら、イデアメリトスの長は問う。
妹の瞳が。
涙に濡れたカナルディの瞳が、強い金の光を放って父親を見上げる。
「だって…」
その唇の端が、釣り上がるように笑う。
「だって…お兄様の結婚相手が全部いなくなったら…私に順番が回ってくるでしょう? 親が半分違って、結婚したことがあるじゃない!」
その場の三人全てが、言葉を失った。
確かに、カナルディの母親とアディマの母親とは違う。
三人の子を産んだ母は、太陽に召されたのだ。
次の父の妻は、カナルディを産んで──そして太陽に召された。
近親婚のせいで、身体が弱い者が多いせいだろう。
その弱りかけた血を。
更に濃くしようと思っていた娘が、ここにいたのだ。
カナルディは、彼をただ兄として、慕っていたわけではなかったのである。
「しかるべき処分を…」
それを、父に向かって口にすることしか──アディマにはできなかった。