アリスズ
☆
シャンデル自身は、ロジューに仕えることになっていた。
それが、当然の流れだった。
だが、ロジュー自身、使用人は十分足りている。
景子の話し相手や、日常の付き合う相手として、ちょうどいいとアディマは思ったのだろう。
嬉しいというか、困るというか。
そんな彼の気遣いに、景子も戸惑っていた。
まだ、シャンデルは彼女の妊娠のことは知らないだろうし、スレイが夫扱いになっているし。
それらを知ったら、一体どんな顔をするだろう。
「イデアメリトスの君から、内々に封書を預かっているわ。あなた…字は読めるの?」
読めないなら、読んであげてもいいわよ。
付け足された言葉に、景子は慌てた。
「だ、大丈夫…読めるわ」
差し出された封書を、どきどきしながら受け取る。
「そう…」
少しだけ残念そうだったのは、シャンデルも手紙の内容が気になっていたのだろう。
人の手を介して送られる手紙なので、当たり障りのない文章で書いてはあるだろうが、彼から初めてもらった手紙である。
大事に、一人で読みたかった。
「で…あなたは農林府に行ったと思っていたのだけれど、ここで何をしているの?」
その手紙を握ったままの景子に、きわめて正当な質問を投げかけられた。
あー。
彼女は、軽く頭の中で回想してみる。
しかし、簡単な返事で答えられるようなものではなかった。
「ええと…」
更に、話の一部にモザイクをかけなければならない。
アディマに関することだ。
「ここに、温かい部屋を作りにきたの…」
とりあえず、一番無難な言葉で返答した。
温かい部屋──怪訝そうに、シャンデルはそれを復唱している。
「あのね…もっと南の植物がすごしやすい部屋なの」
追加説明を入れると。
相変わらずなのね。
植物馬鹿に対する視線が、まっすぐに彼女に突き刺さる。
はい、相変わらずデス。
景子は、苦笑いをするしかできなかった。
シャンデル自身は、ロジューに仕えることになっていた。
それが、当然の流れだった。
だが、ロジュー自身、使用人は十分足りている。
景子の話し相手や、日常の付き合う相手として、ちょうどいいとアディマは思ったのだろう。
嬉しいというか、困るというか。
そんな彼の気遣いに、景子も戸惑っていた。
まだ、シャンデルは彼女の妊娠のことは知らないだろうし、スレイが夫扱いになっているし。
それらを知ったら、一体どんな顔をするだろう。
「イデアメリトスの君から、内々に封書を預かっているわ。あなた…字は読めるの?」
読めないなら、読んであげてもいいわよ。
付け足された言葉に、景子は慌てた。
「だ、大丈夫…読めるわ」
差し出された封書を、どきどきしながら受け取る。
「そう…」
少しだけ残念そうだったのは、シャンデルも手紙の内容が気になっていたのだろう。
人の手を介して送られる手紙なので、当たり障りのない文章で書いてはあるだろうが、彼から初めてもらった手紙である。
大事に、一人で読みたかった。
「で…あなたは農林府に行ったと思っていたのだけれど、ここで何をしているの?」
その手紙を握ったままの景子に、きわめて正当な質問を投げかけられた。
あー。
彼女は、軽く頭の中で回想してみる。
しかし、簡単な返事で答えられるようなものではなかった。
「ええと…」
更に、話の一部にモザイクをかけなければならない。
アディマに関することだ。
「ここに、温かい部屋を作りにきたの…」
とりあえず、一番無難な言葉で返答した。
温かい部屋──怪訝そうに、シャンデルはそれを復唱している。
「あのね…もっと南の植物がすごしやすい部屋なの」
追加説明を入れると。
相変わらずなのね。
植物馬鹿に対する視線が、まっすぐに彼女に突き刺さる。
はい、相変わらずデス。
景子は、苦笑いをするしかできなかった。