アリスズ
☆
「まったく…面倒くさい」
ロジューが、勝手に部屋にやってきた。
毎度おなじみではあるが、入るなりぶつぶつと不満を漏らしている。
景子は、いざアディマからの手紙を開けようと、気合を入れていたところで。
見事に、出鼻をくじかれる結果となっていた。
「騙す人間が増えたぞ」
やれやれと、ロジューが景子のベッドを占領して転がる。
シャンデルのことだろう。
「まったく、愚甥は考えが足りんな。この屋敷にいる間は、お前は農林府の人間で客人扱いだから、使用人にいちいち事情を説明しなくても構わんが…あの者には、そうはいくまい」
シャンデルは、景子の妊娠について、いつかは気づくだろう。
気づいたら、聞き出そうとしてくるのは間違いない。
ロジューの紹介で、彼女の従者と結婚して子供が出来た。
そう、答えなければならないワケだ。
そこで言い淀んだら、シャンデルが勘ぐりかねない。
彼女は、アディマが景子を抱きしめたことを知っているのだから。
旅路で起きたことだった。
いらぬ詮索をされないためには、きちんと嘘をつかなければならないのだ。
確かに。
景子には、少し荷の重い嘘に感じた。
相手が、一緒に旅をした相手であるからこそ、余計に。
一体、嘘はどこまでつけばいいのだろうか。
周囲の人々、職場。
その人数は、きっとだんだん増えてゆくのだ。
「まあ、温室の件が落ち着いたら、一度都へ帰ってもいいぞ」
考え込んだ彼女に、ロジューはそう言ってくれた。
一度。
表現が微妙だ。
また、ここに戻って来いと言うことだろうか。
「温室の効果が分かったら、改めて大きいものを作るからな」
ああ。
ロジューは、巨大温室計画のことを、しっかりと覚えていたのだった。
「まったく…面倒くさい」
ロジューが、勝手に部屋にやってきた。
毎度おなじみではあるが、入るなりぶつぶつと不満を漏らしている。
景子は、いざアディマからの手紙を開けようと、気合を入れていたところで。
見事に、出鼻をくじかれる結果となっていた。
「騙す人間が増えたぞ」
やれやれと、ロジューが景子のベッドを占領して転がる。
シャンデルのことだろう。
「まったく、愚甥は考えが足りんな。この屋敷にいる間は、お前は農林府の人間で客人扱いだから、使用人にいちいち事情を説明しなくても構わんが…あの者には、そうはいくまい」
シャンデルは、景子の妊娠について、いつかは気づくだろう。
気づいたら、聞き出そうとしてくるのは間違いない。
ロジューの紹介で、彼女の従者と結婚して子供が出来た。
そう、答えなければならないワケだ。
そこで言い淀んだら、シャンデルが勘ぐりかねない。
彼女は、アディマが景子を抱きしめたことを知っているのだから。
旅路で起きたことだった。
いらぬ詮索をされないためには、きちんと嘘をつかなければならないのだ。
確かに。
景子には、少し荷の重い嘘に感じた。
相手が、一緒に旅をした相手であるからこそ、余計に。
一体、嘘はどこまでつけばいいのだろうか。
周囲の人々、職場。
その人数は、きっとだんだん増えてゆくのだ。
「まあ、温室の件が落ち着いたら、一度都へ帰ってもいいぞ」
考え込んだ彼女に、ロジューはそう言ってくれた。
一度。
表現が微妙だ。
また、ここに戻って来いと言うことだろうか。
「温室の効果が分かったら、改めて大きいものを作るからな」
ああ。
ロジューは、巨大温室計画のことを、しっかりと覚えていたのだった。