アリスズ
農林府
☆
黒い豹の出てくる夢を見た。
景子は、ベッドの中でふわぁと大きなあくびをして、腰の痛みに完全に覚醒した。
あくびひとつで、まだこの騒ぎだ。
バターン。
そんな彼女の部屋の扉が、ノッカーも鳴らさずに豪快に開けられた。
この屋敷で、そんな技が出来るのはひとりだけ。
「お、おはようございます…」
景子は、横になったままでいるわけにもいかず、腰の痛みをごまかしながら、よろよろと半身を起き上がらせた。
「難儀しているようだな」
そんな景子の様子に、ニヤニヤ顔のロジューが立っている。
「どぉれ…大事な腰だ、見せてみろ」
「あ、いえ…もう大分いいん…うぐっ!」
彼女の行動を止めようと慌てたために、彼女は墓穴を掘った。
痛みに、動きを止められてしまったのである。
「足をやっただけかと思っていたが…そのザマだったか」
ぷつんっと、ロジューは髪を抜く。
「いや、ほんとに…あの…」
痛みをこらえながら、景子は右手に金の炎をともす彼女にストップをかけようとした。
大体。
景子は、ロジューの前では特に腰が痛い素振りを見せないようにしていたため、彼女は気づいていなかったのだ。
なのに、わざわざこんな朝から部屋を襲撃してきたのは、誰かから聞かされたからなのか。
誰か。
ちょっと、考えたくなかった。
「お前が痛がる度に、腹の中の子も痛がっておろう。気にするな…愚甥の手紙も、うるさくお前を助けるように書いてあったしな」
動けない景子をいいことに、軽く片手で彼女の動きを封じると。
ロジューは、金の炎を腰に押し付けてきたのだ。
あうう。
シャンデルは、景子宛だけではなく、ロジュー宛の手紙を預かっていたのか。
甘ヤカシスギデスヨ。
景子は、耳まで真っ赤になりながら、その金の炎の温かさが腰にしみるのを味わった。
「スレイピッドスダートからも、目障りだから治せと言われている」
そして。
ロジューに言いつけた人間の名を出され──景子は、そのまま小さくなっていったのだった。
黒い豹の出てくる夢を見た。
景子は、ベッドの中でふわぁと大きなあくびをして、腰の痛みに完全に覚醒した。
あくびひとつで、まだこの騒ぎだ。
バターン。
そんな彼女の部屋の扉が、ノッカーも鳴らさずに豪快に開けられた。
この屋敷で、そんな技が出来るのはひとりだけ。
「お、おはようございます…」
景子は、横になったままでいるわけにもいかず、腰の痛みをごまかしながら、よろよろと半身を起き上がらせた。
「難儀しているようだな」
そんな景子の様子に、ニヤニヤ顔のロジューが立っている。
「どぉれ…大事な腰だ、見せてみろ」
「あ、いえ…もう大分いいん…うぐっ!」
彼女の行動を止めようと慌てたために、彼女は墓穴を掘った。
痛みに、動きを止められてしまったのである。
「足をやっただけかと思っていたが…そのザマだったか」
ぷつんっと、ロジューは髪を抜く。
「いや、ほんとに…あの…」
痛みをこらえながら、景子は右手に金の炎をともす彼女にストップをかけようとした。
大体。
景子は、ロジューの前では特に腰が痛い素振りを見せないようにしていたため、彼女は気づいていなかったのだ。
なのに、わざわざこんな朝から部屋を襲撃してきたのは、誰かから聞かされたからなのか。
誰か。
ちょっと、考えたくなかった。
「お前が痛がる度に、腹の中の子も痛がっておろう。気にするな…愚甥の手紙も、うるさくお前を助けるように書いてあったしな」
動けない景子をいいことに、軽く片手で彼女の動きを封じると。
ロジューは、金の炎を腰に押し付けてきたのだ。
あうう。
シャンデルは、景子宛だけではなく、ロジュー宛の手紙を預かっていたのか。
甘ヤカシスギデスヨ。
景子は、耳まで真っ赤になりながら、その金の炎の温かさが腰にしみるのを味わった。
「スレイピッドスダートからも、目障りだから治せと言われている」
そして。
ロジューに言いつけた人間の名を出され──景子は、そのまま小さくなっていったのだった。