アリスズ
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アディマは、選択を求められているのだ。
野に出てきた魔法を使う者を、一体どう処すか。
放置しておけば、民衆への影響が大きくなるだろう。
彼らは、普段魔法を見なれていないのだ。
イデアメリトスが魔法を持っていると信じてはいるが、ほとんどのものが見たことはない。
そんな民衆を前に、魔法と言う名の奇跡を見せたならば──影響は、絶大に思えた。
その影響が大きくなる前に。
民衆の心を奪ってしまう前に。
魔法を持つ者を、イデアメリトスは殺さねばならない。
イデアメリトスが関わったと、思われない形で。
たとえ、その者が優しい者であろうと、国をひっくり返そうと思っていなくとも。
アディマは、奥歯を噛みしめた。
昔、この国は戦乱の時代が長く長く続いた。
その戦乱に勝利したのは、イデアメリトスだ。
だが、魔法を使う唯一の血ではなかった。
月の者も、氷の者もいた中で、彼らは勝ったのだ。
そして、いまのこの国の平穏を築き上げた。
だからこそ、千や万の兵を殺すことになる前に、一人を殺さねばならないのである。
魔法は、管理されなければならない。
でなければ、妹のように暴走するからだ。
いま、髪を伸ばせるイデアメリトスは3人。
それ以外の親族は、全て髪を短くし続けなければならない。
たとえ、女性であったとしても。
人並みに老いるためには、そうする必要があるのだ。
だが、本当は短い髪であっても魔法は使う事は可能だった。
だから、叔母の命が狙われた時に、身内全てを疑ったのである。
ただし、髪を伸ばせない者が魔法を使ったと分かった場合は、即座に処断されるのだ。
何の言い訳も出来ず、君主の独断で命を奪われる。
そういう意味では、イデアメリトスは、身内に一番厳しいと言っていいほどだ。
君主になるということは──そういうことなのだ。
最小限の血で、この国全てを背負わなければならないのだ。
「ケイコ…」
彼女が、こんなに側にいるというのに。
血で汚れる手を、景子が恐れてしまわないか。
アディマは、それを一番恐れていた。
アディマは、選択を求められているのだ。
野に出てきた魔法を使う者を、一体どう処すか。
放置しておけば、民衆への影響が大きくなるだろう。
彼らは、普段魔法を見なれていないのだ。
イデアメリトスが魔法を持っていると信じてはいるが、ほとんどのものが見たことはない。
そんな民衆を前に、魔法と言う名の奇跡を見せたならば──影響は、絶大に思えた。
その影響が大きくなる前に。
民衆の心を奪ってしまう前に。
魔法を持つ者を、イデアメリトスは殺さねばならない。
イデアメリトスが関わったと、思われない形で。
たとえ、その者が優しい者であろうと、国をひっくり返そうと思っていなくとも。
アディマは、奥歯を噛みしめた。
昔、この国は戦乱の時代が長く長く続いた。
その戦乱に勝利したのは、イデアメリトスだ。
だが、魔法を使う唯一の血ではなかった。
月の者も、氷の者もいた中で、彼らは勝ったのだ。
そして、いまのこの国の平穏を築き上げた。
だからこそ、千や万の兵を殺すことになる前に、一人を殺さねばならないのである。
魔法は、管理されなければならない。
でなければ、妹のように暴走するからだ。
いま、髪を伸ばせるイデアメリトスは3人。
それ以外の親族は、全て髪を短くし続けなければならない。
たとえ、女性であったとしても。
人並みに老いるためには、そうする必要があるのだ。
だが、本当は短い髪であっても魔法は使う事は可能だった。
だから、叔母の命が狙われた時に、身内全てを疑ったのである。
ただし、髪を伸ばせない者が魔法を使ったと分かった場合は、即座に処断されるのだ。
何の言い訳も出来ず、君主の独断で命を奪われる。
そういう意味では、イデアメリトスは、身内に一番厳しいと言っていいほどだ。
君主になるということは──そういうことなのだ。
最小限の血で、この国全てを背負わなければならないのだ。
「ケイコ…」
彼女が、こんなに側にいるというのに。
血で汚れる手を、景子が恐れてしまわないか。
アディマは、それを一番恐れていた。