アリスズ
□
「叔母上様!」
アディマは、ロジューの部屋を訪れた。
「なんだ、騒々しい」
彼女は、一人だった。
どこかにケイコがいるかと、アディマは一瞬顎を巡らせる。
「どういうことですか、叔母上様。ケイコを同行させるつもりとは」
父から、例の歌う者の討伐に、ロジューを向かわせることは聞いた。
だが、それには追加があって。
ケイコも連れて行くと聞いた時には、彼の心臓はつぶれそうなほど痛んだのである。
その足で、アディマは叔母の部屋へ直行したのだ。
「行きたいと言ったのは、あの者だぞ。大した熱意だったから、連れて行くことにしただけだ」
フン、と。
ロジューは、鼻を鳴らす。
また、アディマの過保護が出たかとでも思っているのだろうか。
「そんな気楽に、受けるべきことではないでしょう。彼女は…」
「うるさい」
続けようとした言葉を、叔母は一言踏みつぶす。
「いいか? イデアメリトスの選択は、私の魔法で国の不安材料を取り除くということだ」
バンと、その手がテーブルに叩きつけられる。
「私は、最大限の努力をする。ケーコは、相手の片割れを知っているかもしれないと言った。そして、自分が役に立つと私に売り込んだのだ。勘違いするな…まだケーコは、イデアメリトスにとって何の意味もない女だ」
厳しい言葉で、ロジューは甥を打ちのめした。
ケイコのことを、イデアメリトスには何の意味もないとまで言い放ったのだ。
叔母が、彼女を蔑んで言っているわけではない。
国にとって、ということだ。
「では、僕が行きましょう!」
アディマは、身を乗り出した。
たまたま叔母がいたから、彼女に白羽の矢が立っただけだ。
本来ならば、アディマが行かなければならないことである。
ここで、自分が行っても──いや、行くべきなのだ。
叔母の唇が、「ほぉ」と小さい音を洩らす。
「その剣幕を、もう一度兄者にぶつけてきたらどうだ?」
だが、その後に出てきたのは、痛烈な厭味だった。
「言われなくても、そうします」
アディマは、その厭味をツラの皮で弾き返しながら、身を翻したのだった。
「叔母上様!」
アディマは、ロジューの部屋を訪れた。
「なんだ、騒々しい」
彼女は、一人だった。
どこかにケイコがいるかと、アディマは一瞬顎を巡らせる。
「どういうことですか、叔母上様。ケイコを同行させるつもりとは」
父から、例の歌う者の討伐に、ロジューを向かわせることは聞いた。
だが、それには追加があって。
ケイコも連れて行くと聞いた時には、彼の心臓はつぶれそうなほど痛んだのである。
その足で、アディマは叔母の部屋へ直行したのだ。
「行きたいと言ったのは、あの者だぞ。大した熱意だったから、連れて行くことにしただけだ」
フン、と。
ロジューは、鼻を鳴らす。
また、アディマの過保護が出たかとでも思っているのだろうか。
「そんな気楽に、受けるべきことではないでしょう。彼女は…」
「うるさい」
続けようとした言葉を、叔母は一言踏みつぶす。
「いいか? イデアメリトスの選択は、私の魔法で国の不安材料を取り除くということだ」
バンと、その手がテーブルに叩きつけられる。
「私は、最大限の努力をする。ケーコは、相手の片割れを知っているかもしれないと言った。そして、自分が役に立つと私に売り込んだのだ。勘違いするな…まだケーコは、イデアメリトスにとって何の意味もない女だ」
厳しい言葉で、ロジューは甥を打ちのめした。
ケイコのことを、イデアメリトスには何の意味もないとまで言い放ったのだ。
叔母が、彼女を蔑んで言っているわけではない。
国にとって、ということだ。
「では、僕が行きましょう!」
アディマは、身を乗り出した。
たまたま叔母がいたから、彼女に白羽の矢が立っただけだ。
本来ならば、アディマが行かなければならないことである。
ここで、自分が行っても──いや、行くべきなのだ。
叔母の唇が、「ほぉ」と小さい音を洩らす。
「その剣幕を、もう一度兄者にぶつけてきたらどうだ?」
だが、その後に出てきたのは、痛烈な厭味だった。
「言われなくても、そうします」
アディマは、その厭味をツラの皮で弾き返しながら、身を翻したのだった。