アリスズ
☆
よし。
景子は、考えた。
目的地に到着するまで、おそらく結構な日数がかかるだろう。
それならば、と。
彼女は、日本人だ。
この世界に、根を下ろすと決めはしたものの、その根元は変わらないわけで。
日本人ならば、日本人らしく根回しをしよう!
いきなり、景子がやろうと思っていることを行動したところで、うまくいくはずがない。
ロジューとアディマ、ダイとは話をすることは可能なこの環境で、一人でも味方が増えればいいではないか。
ということで、景子は常に一緒にいるロジューを、最初のターゲットにしたのだ。
「出会っていきなり…魔法ぶっ放したりは…しないですよ、ね?」
クッションに身を預けているロジューは、彼女の言葉にけだるげに寝返りを打つ。
「あぁ? そんなもの気分だ…」
だるい声が、それこそ気分で返事をしている。
「気分って」
景子の知り合いが、一緒にいるかもしれないことは、既に知っているにも関わらず、そんなことはお構いなしのようだ。
「別の言い方をすれば、カンだ…相手がヤバイ奴だったら、躊躇などしない」
旅を多くしている彼女が、いまも生きているということは、それだけ強かったということだ。
その強さの中に、カンも含まれるのだろう。
景子は、ちょっと嫌な予感がした。
歌を歌う人、ではなく──菊だ。
ロジューのカンが、菊を見てどう働くか。
菊は、基本穏やかで明るいが、戦いとなるとまったく躊躇がない。
命のやりとりに、本当に躊躇しないのだ。
考えすぎかもしれないが、ロジューと菊を会わせることに、不安が頭をもたげてきた。
「あのぉ…変な剣を持ってる人は、私が絶対止めますから…いきなり魔法は…」
不安を隠せないまま、もうひとおし。
「なら、私に出会う前に見つけて止めるんだな…私は知らん」
ロジューは、まったくもっていつも通りだった。
あう。
景子は、がくっと肩を落とす。
根回しは──完全な失敗だった。
よし。
景子は、考えた。
目的地に到着するまで、おそらく結構な日数がかかるだろう。
それならば、と。
彼女は、日本人だ。
この世界に、根を下ろすと決めはしたものの、その根元は変わらないわけで。
日本人ならば、日本人らしく根回しをしよう!
いきなり、景子がやろうと思っていることを行動したところで、うまくいくはずがない。
ロジューとアディマ、ダイとは話をすることは可能なこの環境で、一人でも味方が増えればいいではないか。
ということで、景子は常に一緒にいるロジューを、最初のターゲットにしたのだ。
「出会っていきなり…魔法ぶっ放したりは…しないですよ、ね?」
クッションに身を預けているロジューは、彼女の言葉にけだるげに寝返りを打つ。
「あぁ? そんなもの気分だ…」
だるい声が、それこそ気分で返事をしている。
「気分って」
景子の知り合いが、一緒にいるかもしれないことは、既に知っているにも関わらず、そんなことはお構いなしのようだ。
「別の言い方をすれば、カンだ…相手がヤバイ奴だったら、躊躇などしない」
旅を多くしている彼女が、いまも生きているということは、それだけ強かったということだ。
その強さの中に、カンも含まれるのだろう。
景子は、ちょっと嫌な予感がした。
歌を歌う人、ではなく──菊だ。
ロジューのカンが、菊を見てどう働くか。
菊は、基本穏やかで明るいが、戦いとなるとまったく躊躇がない。
命のやりとりに、本当に躊躇しないのだ。
考えすぎかもしれないが、ロジューと菊を会わせることに、不安が頭をもたげてきた。
「あのぉ…変な剣を持ってる人は、私が絶対止めますから…いきなり魔法は…」
不安を隠せないまま、もうひとおし。
「なら、私に出会う前に見つけて止めるんだな…私は知らん」
ロジューは、まったくもっていつも通りだった。
あう。
景子は、がくっと肩を落とす。
根回しは──完全な失敗だった。