アリスズ
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領主の屋敷に先に戻ったダイは、イデアメリトスの君の前へと参じた。
彼の命を救った叔母君も、そこには同席している。
彼女は、片方の長いソファを独占するように、身体を寝そべらせていた。
「申し上げます…」
そんな二人の前に膝をつき、ダイは出来るだけゆっくりとそう宣言した。
これから、自分が言おうとしていることを、出来る限り誤解なく伝えるためだ。
「噂の元と思われる二人組と…町で会いました」
よみがえる記憶をたどりながら、はっきりと言葉にする。
「二人は今夜…この屋敷を訪問します」
ここにいるのは、イデアメリトス二人。
だからこそ、ダイは逆に事実のみを言葉に出来たのだ。
何故に捕まえてこなかった、という叱責が来ることは──まったく考えてもいなかった。
彼らの思考は、貴族たちさえも到底届かないところを飛んでいるのだ。
「そうか」
「ほう…面白いことになったな」
イデアメリトスの君も叔母君も、どちらもダイの報告を静かに受け止める。
軽く、ではない。
二人とも、その意味を噛みしめているのだ。
「ダイエルファン…」
イデアメリトスの君は、彼に呼びかける。
「君は、どう思った?」
問いかけに、一度瞼を伏せる。
報告だけで済むとは、思っていなかった。
「分かりません…」
感想など、言えるはずなどない。
本当に、分からないのだ。
大した学が、あるわけではなく、言葉がうまいわけでもない。
イデアメリトスの君に、分かりやすくこの感覚を説明することなど、出来はしなかった。
「ただ、二人の内片方は…彼女でした」
彼が、伝えられるのは事実のみ。
彼女。
名前を呼べない病は、まだ身の内に巣くったままだった。
領主の屋敷に先に戻ったダイは、イデアメリトスの君の前へと参じた。
彼の命を救った叔母君も、そこには同席している。
彼女は、片方の長いソファを独占するように、身体を寝そべらせていた。
「申し上げます…」
そんな二人の前に膝をつき、ダイは出来るだけゆっくりとそう宣言した。
これから、自分が言おうとしていることを、出来る限り誤解なく伝えるためだ。
「噂の元と思われる二人組と…町で会いました」
よみがえる記憶をたどりながら、はっきりと言葉にする。
「二人は今夜…この屋敷を訪問します」
ここにいるのは、イデアメリトス二人。
だからこそ、ダイは逆に事実のみを言葉に出来たのだ。
何故に捕まえてこなかった、という叱責が来ることは──まったく考えてもいなかった。
彼らの思考は、貴族たちさえも到底届かないところを飛んでいるのだ。
「そうか」
「ほう…面白いことになったな」
イデアメリトスの君も叔母君も、どちらもダイの報告を静かに受け止める。
軽く、ではない。
二人とも、その意味を噛みしめているのだ。
「ダイエルファン…」
イデアメリトスの君は、彼に呼びかける。
「君は、どう思った?」
問いかけに、一度瞼を伏せる。
報告だけで済むとは、思っていなかった。
「分かりません…」
感想など、言えるはずなどない。
本当に、分からないのだ。
大した学が、あるわけではなく、言葉がうまいわけでもない。
イデアメリトスの君に、分かりやすくこの感覚を説明することなど、出来はしなかった。
「ただ、二人の内片方は…彼女でした」
彼が、伝えられるのは事実のみ。
彼女。
名前を呼べない病は、まだ身の内に巣くったままだった。