アリスズ
☆
「府の書類は全て、軍令府の兵士が運ぶことになっている」
室長の、ありがたい言葉がそれだった。
「火急の用事以外は、月に一度の出発ですよ、ね?」
役所の情報の流れは、非常に鈍重だ。
都と地方の、情報の格差と時間差は大きい。
「役所は、十年単位より長い間隔で物事を考えるのだ。だから、月に一度の情報伝達で、これまでも問題なくやってきている」
ああ。
君主が長生きだと、国民も長いスパンでものを考えるようになるのか。
そして、現状維持を美徳としている気もする。
うーん。
景子は、この国と日本江戸時代を重ねて考えてしまった。
よその大陸の、よその国や文明のことが、この国にいると聞こえてこないのだ。
結果的に、鎖国をしているのと同じ気がする。
よその国の文明が遅れていれば、何ら問題はないが、ある日黒船がやってきて、たった四杯で夜も眠れず、にならなければいいのだが。
「常に、情報は流れていた方がいいと思うんですが…」
しかし。
景子は、しゃべりながらも室長を説得する言葉を、自分がたくさん持っていないことを知ったのだ。
次に、彼はこういうだろう。
『それは、農林府の考えることではない』
まさに──その通りのことを言われた。
あー。
彼女は、植物馬鹿だ。
だからこそ、植物のことならば、どれほど熱く語り尽くしてでも説得しようと頑張るだろう。
だが、運輸のことになってくると、景子では脳みそも足りないし、情熱も若干下がってしまう。
引く、しかなかった。
梅さんが、いてくれたらなあ。
ふと。
景子は、北にいる彼女のことを思った。
彼女ならば、自分の言わんとしていることを、理路整然と、そして相手の心を動かす言葉で言ってくれる気がしたのだ。
とりあえず。
景子は、無理に引っ張って来たリクに、謝りにいかなければならなかった。
「府の書類は全て、軍令府の兵士が運ぶことになっている」
室長の、ありがたい言葉がそれだった。
「火急の用事以外は、月に一度の出発ですよ、ね?」
役所の情報の流れは、非常に鈍重だ。
都と地方の、情報の格差と時間差は大きい。
「役所は、十年単位より長い間隔で物事を考えるのだ。だから、月に一度の情報伝達で、これまでも問題なくやってきている」
ああ。
君主が長生きだと、国民も長いスパンでものを考えるようになるのか。
そして、現状維持を美徳としている気もする。
うーん。
景子は、この国と日本江戸時代を重ねて考えてしまった。
よその大陸の、よその国や文明のことが、この国にいると聞こえてこないのだ。
結果的に、鎖国をしているのと同じ気がする。
よその国の文明が遅れていれば、何ら問題はないが、ある日黒船がやってきて、たった四杯で夜も眠れず、にならなければいいのだが。
「常に、情報は流れていた方がいいと思うんですが…」
しかし。
景子は、しゃべりながらも室長を説得する言葉を、自分がたくさん持っていないことを知ったのだ。
次に、彼はこういうだろう。
『それは、農林府の考えることではない』
まさに──その通りのことを言われた。
あー。
彼女は、植物馬鹿だ。
だからこそ、植物のことならば、どれほど熱く語り尽くしてでも説得しようと頑張るだろう。
だが、運輸のことになってくると、景子では脳みそも足りないし、情熱も若干下がってしまう。
引く、しかなかった。
梅さんが、いてくれたらなあ。
ふと。
景子は、北にいる彼女のことを思った。
彼女ならば、自分の言わんとしていることを、理路整然と、そして相手の心を動かす言葉で言ってくれる気がしたのだ。
とりあえず。
景子は、無理に引っ張って来たリクに、謝りにいかなければならなかった。