アリスズ
☆
翌日が、旅立つ日だった。
前夜に梅が、「明日じゃないかしら」と言ってくれていたので、驚いたり慌てたりすることはなかったが、それでも相当朝早く起こされた。
ねぼけまなこをこすりながら、着替えを始める。
めがねめがね。
毎朝の、お約束も忘れていない。
この世界でメガネをなくしてしまったら、同じものは二度と手に入らない。
大事にしなければ。
そんな彼女の気持ちを、どうして気づけるのだろう。
昨夜、梅が端布を編み合わせて作った、メガネのストラップをくれたのだ。
器用な細い指を、感心してしげしげと眺めてしまった。
これでメガネが外れても、地面まで落下することはない。
景子は感激してしまって、思わず梅をぎゅうっと抱きしめた。
ああ、お天道様ありがとう。
こんなによい人たちと、一緒にいさせてくれて本当にありがとう。
代わりに景子は、エプロンのポケットから出てきた種を、梅に預けた。
花の種の小袋だ。
こっちで同じ品種がなければ、きっとあの女主人が喜ぶだろう。
女主人が喜べば、梅を置いておいてよかったと、もっと思ってくれるだろう。
『大事に育てます』
そう、梅は微笑んでくれた。
そして。
菊は腰に刀を差す。
これまで着てきた袴などは、布に包んで背中にたすきがけに背負っている。
景子も真似をしようとしたが、なかなかうまく回せない。
梅に手伝ってもらって、何とか背負う。
その上から。
あー。
最後まで馴染めなかったマント。
しかし、これからいつまでか分からないが、仲良くしなければならないものでもあった。
よっ、はっ、とっ。
悪戦苦闘しながら巻きつけていると。
ノッカーの音がした。
時間のようだった。
翌日が、旅立つ日だった。
前夜に梅が、「明日じゃないかしら」と言ってくれていたので、驚いたり慌てたりすることはなかったが、それでも相当朝早く起こされた。
ねぼけまなこをこすりながら、着替えを始める。
めがねめがね。
毎朝の、お約束も忘れていない。
この世界でメガネをなくしてしまったら、同じものは二度と手に入らない。
大事にしなければ。
そんな彼女の気持ちを、どうして気づけるのだろう。
昨夜、梅が端布を編み合わせて作った、メガネのストラップをくれたのだ。
器用な細い指を、感心してしげしげと眺めてしまった。
これでメガネが外れても、地面まで落下することはない。
景子は感激してしまって、思わず梅をぎゅうっと抱きしめた。
ああ、お天道様ありがとう。
こんなによい人たちと、一緒にいさせてくれて本当にありがとう。
代わりに景子は、エプロンのポケットから出てきた種を、梅に預けた。
花の種の小袋だ。
こっちで同じ品種がなければ、きっとあの女主人が喜ぶだろう。
女主人が喜べば、梅を置いておいてよかったと、もっと思ってくれるだろう。
『大事に育てます』
そう、梅は微笑んでくれた。
そして。
菊は腰に刀を差す。
これまで着てきた袴などは、布に包んで背中にたすきがけに背負っている。
景子も真似をしようとしたが、なかなかうまく回せない。
梅に手伝ってもらって、何とか背負う。
その上から。
あー。
最後まで馴染めなかったマント。
しかし、これからいつまでか分からないが、仲良くしなければならないものでもあった。
よっ、はっ、とっ。
悪戦苦闘しながら巻きつけていると。
ノッカーの音がした。
時間のようだった。