アリスズ
☆
幸せって──痛い。
景子は、自分の身体の中でどんどんひどくなっていく痛みに、青ざめていた。
これが、本当に正しい陣痛なのか、なんて知っているはずもないのだから。
「大丈夫だよ、まだまだ先さ。ゆっくりしていればいい」
女中頭のネラッサンダンは、笑いながら出て行ってしまう。
産婆などは、全て彼女が手配してくれることになっているので、その準備に向かったのだろう。
代わりに残されたのは、彼女の息子のシェローだけ。
「ケーコ、痛いか? かあちゃん呼ぶか?」
と、彼がオロオロしてくれたおかげで、景子は逆に落ち着くことが出来た。
「大丈夫。シェローだって、ちゃんと生まれたんだもんね。この子たちも、ちゃんと生まれるよ」
楽になっては、また痛む。
また痛んでは、楽になる。
「そうだよな。かあちゃんだって、ケーコだってちゃんと生まれたんだよな」
彼女のおなかに手を伸ばしてなでながら、シェローが感心したような声で言葉を紡ぐ。
ああ、そうか。
私も、生まれたんだっけ。
こうやって。
お母さんの身体の中で暴れて。
母の、希望通りの娘としては、生まれることは出来なかった。
自分の奇妙な能力も、この世界では少しは役に立った。
こんな、奇妙な能力のある自分だからこそ。
自分やアディマの能力が、この子たちに遺伝していても、ちゃんとまっすぐ向き合えると思った。
そうか。
きっと。
きっと、自分の能力は、アディマの子をちゃんと産んで育てるために、前もってもらっていたものなのだ。
ああ。
ああ、痛い、痛い。
さっきより、痛みの間隔が少し短くなった。
幸せって。
やはり、痛いの裏っかわにいるのだろう。
幸せって──痛い。
景子は、自分の身体の中でどんどんひどくなっていく痛みに、青ざめていた。
これが、本当に正しい陣痛なのか、なんて知っているはずもないのだから。
「大丈夫だよ、まだまだ先さ。ゆっくりしていればいい」
女中頭のネラッサンダンは、笑いながら出て行ってしまう。
産婆などは、全て彼女が手配してくれることになっているので、その準備に向かったのだろう。
代わりに残されたのは、彼女の息子のシェローだけ。
「ケーコ、痛いか? かあちゃん呼ぶか?」
と、彼がオロオロしてくれたおかげで、景子は逆に落ち着くことが出来た。
「大丈夫。シェローだって、ちゃんと生まれたんだもんね。この子たちも、ちゃんと生まれるよ」
楽になっては、また痛む。
また痛んでは、楽になる。
「そうだよな。かあちゃんだって、ケーコだってちゃんと生まれたんだよな」
彼女のおなかに手を伸ばしてなでながら、シェローが感心したような声で言葉を紡ぐ。
ああ、そうか。
私も、生まれたんだっけ。
こうやって。
お母さんの身体の中で暴れて。
母の、希望通りの娘としては、生まれることは出来なかった。
自分の奇妙な能力も、この世界では少しは役に立った。
こんな、奇妙な能力のある自分だからこそ。
自分やアディマの能力が、この子たちに遺伝していても、ちゃんとまっすぐ向き合えると思った。
そうか。
きっと。
きっと、自分の能力は、アディマの子をちゃんと産んで育てるために、前もってもらっていたものなのだ。
ああ。
ああ、痛い、痛い。
さっきより、痛みの間隔が少し短くなった。
幸せって。
やはり、痛いの裏っかわにいるのだろう。