アリスズ
☆
もう一人の子には、ほくろはなかった。
しかし、この子の方が、もう一人より肌の色が薄い。
一卵性ではないのだろうか。
「こっちでは、先に産まれた方が兄だってさ…梅の抱いていた方だね」
乳をもらって、ようやく眠り始めた二人の赤ん坊の頬を、菊は軽く指先でつついた。
「見分けやすくてよかったな…うちと一緒だ」
彼女は、とても嬉しそうにつつく。
ふにゃあと、兄の方が泣いた。
「菊、あんまりいじっちゃだめよ…産まれてきたばかりで疲れてるんだから。それは景子さんも一緒ね…少し眠ったらどうかしら」
気を遣った二人が、部屋を出て行こうとした時。
開いた扉の向こうに──リサーがいた。
「ゴホン…入ってもいいか」
女性の、出産した部屋である。
いくら彼でも、不用意に入れなかったのだろう。
「手短に」
梅は、歓迎しない声で答えた。
景子にとって、よい客ではないと思っているに違いない。
リサーの目的は、彼女にだって分かっている。
アディマに、生まれた子供のことを報告するためだ。
だから、彼は景子はちらと見るだけで、その後、二人の子をじーっと穴が開くほど見つめた。
「本当に、二人とは…」
そう、ため息混じりに呟いた後、リサーは景子を向き直った。
「後日、正式に沙汰がある。その時、魔法の力を持っているかどうか確認される。それまで、大事に育てよ」
彼の言葉は── 一方的だった。
必要であれば、そのまま子供だけ連れて行くと言わんばかりだ。
景子が、驚きで口もきけずにいると。
出て行こうとするリサーの前に、菊が立ちふさがる。
「馬車でも言ったろう? 何でも思い通りにしようなんて…思わない方がいい」
「イデアメリトスの君の代行にしては…赤ん坊に対する愛が足りませんわね」
二人のゴッドマザーは。
もう、彼女の子供たちを、守ろうとしてくれた。
もう一人の子には、ほくろはなかった。
しかし、この子の方が、もう一人より肌の色が薄い。
一卵性ではないのだろうか。
「こっちでは、先に産まれた方が兄だってさ…梅の抱いていた方だね」
乳をもらって、ようやく眠り始めた二人の赤ん坊の頬を、菊は軽く指先でつついた。
「見分けやすくてよかったな…うちと一緒だ」
彼女は、とても嬉しそうにつつく。
ふにゃあと、兄の方が泣いた。
「菊、あんまりいじっちゃだめよ…産まれてきたばかりで疲れてるんだから。それは景子さんも一緒ね…少し眠ったらどうかしら」
気を遣った二人が、部屋を出て行こうとした時。
開いた扉の向こうに──リサーがいた。
「ゴホン…入ってもいいか」
女性の、出産した部屋である。
いくら彼でも、不用意に入れなかったのだろう。
「手短に」
梅は、歓迎しない声で答えた。
景子にとって、よい客ではないと思っているに違いない。
リサーの目的は、彼女にだって分かっている。
アディマに、生まれた子供のことを報告するためだ。
だから、彼は景子はちらと見るだけで、その後、二人の子をじーっと穴が開くほど見つめた。
「本当に、二人とは…」
そう、ため息混じりに呟いた後、リサーは景子を向き直った。
「後日、正式に沙汰がある。その時、魔法の力を持っているかどうか確認される。それまで、大事に育てよ」
彼の言葉は── 一方的だった。
必要であれば、そのまま子供だけ連れて行くと言わんばかりだ。
景子が、驚きで口もきけずにいると。
出て行こうとするリサーの前に、菊が立ちふさがる。
「馬車でも言ったろう? 何でも思い通りにしようなんて…思わない方がいい」
「イデアメリトスの君の代行にしては…赤ん坊に対する愛が足りませんわね」
二人のゴッドマザーは。
もう、彼女の子供たちを、守ろうとしてくれた。