アリスズ

 そして。

 ついに、アディマからのお呼び出しとやらがやってきた。

 どうやって、二人を抱えていこうかと悩んでいた景子は、それが杞憂であることが、すぐに分かった。

 到着した荷馬車から、梅と菊が現れたのである。

「チビたちを迎えに来たよ」

「こんにちは、ハレくん、テルくん」

 二人がいるだけで、なんと心強いことか。

 ハレは梅に、テルは菊に。

 最初から、そこが収まる場所であったかのように抱き上げられるのだ。

 ふにゃふにゃと、ハレが梅の腕の中でみじろいだ。

「ふふふ、何かをしゃべろうとしているのかしらね」

 梅の母性的な色が、ほのかに浮かび上がる。

 はぁ。

 それに、ゆっくりと景子はため息をついた。

 何だか、安心してしまったのだ。

 リサーには脅しをかけられてたし、元々この子たちは、アディマと結ばれる口実のような存在だった。

 産んでしまった今は、もはやそんな考え方は出来なくて。

 ただただ、この子たちを元気に育てたい。

 そう思っている。

 だが。

 アディマの立場を考えると、景子の意見が簡単に通るとも思えなかった。

 だから、いろいろ不安を抱えていたのだ。

 でも。

 この子たちの父親は、アディマだから。

 景子の好きになった彼だから。

 きっと、この子たちに悪いようにはならないんじゃないか。

 そう、思った。

 そこに、梅と菊が来てくれたのだ。

 景子の恐れるものが、裸足で逃げだしそうなゴッドマザーたち。

 大丈夫。

 アディマに、息子たちを見せに行こう。

 そんな気持ちで、景子は荷馬車に乗り込んだのだった。
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