アリスズ
☆
「久しぶりだね、ケイコ」
アディマは──変わらなかった。
人払いされた東翼。
案内されたのは、五人。
景子、梅、菊。
それと、ハレとテル。
「久しぶり…」
二人きりではないので、顔を合わせるのは少し照れる。
でも、彼が考え込んだ様子や、暗い素振りを見せないのは嬉しいことだった。
子供の事で、アディマを悩ませているのではないだろうか。
そう考えたこともあったので。
「兄はどっちだい?」
菊と梅の腕の中の赤ん坊を見ながら、彼は苦笑した。
双子ならではの悩みに、困惑しているのだろうか。
「こちらのハレです」
梅が、腕に抱いた子を差し出す。
「ハレ?」
仮の名を、梅が堂々と口に出すものだから、景子は焦った。
「はい、私達の国の言葉で、太陽の差すよい天気という意味です」
語源まで説明するものだから、なお景子は冷や汗をかく。
「あ、あの…アディマ、これはその…」
勝手に名前をつけたわけじゃないのだと、そう言い訳をしようとしたら。
「そうか。いい名だね。では、みなにハレと呼んでもらえる名にしよう。この子は、ケイコに似ているな」
あっさりと。
アディマは、本当にあっさりと、その名前を受け入れた。
いいんだろうかと、景子が戸惑ってしまうほどに。
「テルです。太陽が差す様を表す名前です。とびっきり、元気がいいですよ」
菊が、弟を差し出す。
「ああ、こっちは僕の血がはっきり出ているな。ほくろが二つ…皆が忘れない子になるだろう」
アディマは、赤ん坊を一人ずつ抱いてくれた。
ハレ、テル、お父さんだよ。
それを、言葉に出して許されることか分からないけれども。
景子は心の中で、子供たちに言ったのだった。
「久しぶりだね、ケイコ」
アディマは──変わらなかった。
人払いされた東翼。
案内されたのは、五人。
景子、梅、菊。
それと、ハレとテル。
「久しぶり…」
二人きりではないので、顔を合わせるのは少し照れる。
でも、彼が考え込んだ様子や、暗い素振りを見せないのは嬉しいことだった。
子供の事で、アディマを悩ませているのではないだろうか。
そう考えたこともあったので。
「兄はどっちだい?」
菊と梅の腕の中の赤ん坊を見ながら、彼は苦笑した。
双子ならではの悩みに、困惑しているのだろうか。
「こちらのハレです」
梅が、腕に抱いた子を差し出す。
「ハレ?」
仮の名を、梅が堂々と口に出すものだから、景子は焦った。
「はい、私達の国の言葉で、太陽の差すよい天気という意味です」
語源まで説明するものだから、なお景子は冷や汗をかく。
「あ、あの…アディマ、これはその…」
勝手に名前をつけたわけじゃないのだと、そう言い訳をしようとしたら。
「そうか。いい名だね。では、みなにハレと呼んでもらえる名にしよう。この子は、ケイコに似ているな」
あっさりと。
アディマは、本当にあっさりと、その名前を受け入れた。
いいんだろうかと、景子が戸惑ってしまうほどに。
「テルです。太陽が差す様を表す名前です。とびっきり、元気がいいですよ」
菊が、弟を差し出す。
「ああ、こっちは僕の血がはっきり出ているな。ほくろが二つ…皆が忘れない子になるだろう」
アディマは、赤ん坊を一人ずつ抱いてくれた。
ハレ、テル、お父さんだよ。
それを、言葉に出して許されることか分からないけれども。
景子は心の中で、子供たちに言ったのだった。