アリスズ

 ハレイルーシュリクス=イデアメリトス=ラットフル18。

 テルタリウスミシータ=イデアメリトス=アウラピス18。

 突然。

 景子にとって、子供たちの名前が仰々しいものになった。

 アディマが、イデアメリトスの名を、双子の子に与えたのだ。

 たったそれだけで、景子の手から子供たちが離れた気がした。

 ハレとテルに、変わりないはずなのに。

「イデアメリトスの君…」

 梅が、うやうやしく頭を垂れる。

「今後、この御子たちは、どちらで育てられますか?」

 景子が。

 母親が聞けないでいることを、梅はすっぱりと問いかけた。

 その問いに、アディマはすぐに答えなかった。

 ゆっくりと、景子の方を見る。

 その瞳は、優しかった。

 不安で凝り固まっている彼女に、優しく微笑みかけるのだ。

「ケイコ…」

 質問は梅からだったが、言葉は景子に向けられた。

「姑息な話に聞こえるかもしれないが…大義名分は、全部用意した」

 そして、不思議な前置きの話を始める。

 大義名分?

「リサーも納得させた」

 ええと。

「だから…」

 何を。

 いや、何処へ。

 アディマは、いま何処へ向かう道の話をしているのか。

「だから…正式に僕の妻として迎えたい」

 ピシャーッドンガラガッシャンドドーン!

 景子の頭の中に、特大の雷が落ちた。

 もはや。

 子供と暮らせることだけを、最後の望みとしていた景子の前に、とんでもない椅子が置かれたのだ。

 これに、座れと。

 アディマは、彼の隣にある椅子に座れと、言っているのだ。
< 395 / 511 >

この作品をシェア

pagetop