アリスズ
□
「イデアメリトス以外の妻を娶られるなど、前代未聞ですぞ!」
太陽府の府長は、のっけから大反対を唱えた。
イデアメリトスや儀式、宮殿に関する取り仕切りが、この府の仕事だ。
リサーを右に、ダイを左に。
その真ん中にアディマは座って、府長を見ていた。
「ただの娘ではない…太陽の昇る国からの御使いだ…魔法の力も持っている」
彼は、悠然と構えた。
「そんな国など、聞いたこともございませんが」
魔法の力、という言葉が効いたのだろうか。
府長は、わずかに語気を弱めた。
彼らの中にしみついている、魔法信仰のおかげだ。
「そうだろうな。この世界にはない国だ」
嘘はない。
だから、アディマもこうして堂々と口に出せる。
「違う世界から来たとおおせですか…」
府長は、頭の中でそれらの事を、うまく組み立てられないでいるようだ。
「既に、子供も二人いる。男の子だ。二人とも、魔法の力を受け継いでいる」
そして、とどめを刺す。
アディマが妻を娶るということは、子供が必要だからだ。
その子供の問題が、既に解決しているのである。
「それが…本当に殿下の御子である証明は…」
だが。
まだ、府長は食らいついてきた。
元々、魔法の力を持つ女ならば、他の男の子を使ってこの国を乗っ取ろう──そう考えているのでは。
慎重で、そして正しい思考だ。
アディマは、自分の国の太陽府府長が、馬鹿ではないという事実に大いに満足した。
「我が叔母上が、婚姻の儀の証人だ。いま西翼に来ておいでだから、確認に行くがいい。この婚姻の儀は、父上も御認めになっている」
とどめのとどめ。
この国で、三人だけの正当なイデアメリトス。
その全員が、この異国の娘との婚儀に噛んでいる。
もはや。
府長は、反論出来ないようだ。
リサーは、何か言いたげにこの場の空気を見たが──小さなため息をひとつついただけだった。
「イデアメリトス以外の妻を娶られるなど、前代未聞ですぞ!」
太陽府の府長は、のっけから大反対を唱えた。
イデアメリトスや儀式、宮殿に関する取り仕切りが、この府の仕事だ。
リサーを右に、ダイを左に。
その真ん中にアディマは座って、府長を見ていた。
「ただの娘ではない…太陽の昇る国からの御使いだ…魔法の力も持っている」
彼は、悠然と構えた。
「そんな国など、聞いたこともございませんが」
魔法の力、という言葉が効いたのだろうか。
府長は、わずかに語気を弱めた。
彼らの中にしみついている、魔法信仰のおかげだ。
「そうだろうな。この世界にはない国だ」
嘘はない。
だから、アディマもこうして堂々と口に出せる。
「違う世界から来たとおおせですか…」
府長は、頭の中でそれらの事を、うまく組み立てられないでいるようだ。
「既に、子供も二人いる。男の子だ。二人とも、魔法の力を受け継いでいる」
そして、とどめを刺す。
アディマが妻を娶るということは、子供が必要だからだ。
その子供の問題が、既に解決しているのである。
「それが…本当に殿下の御子である証明は…」
だが。
まだ、府長は食らいついてきた。
元々、魔法の力を持つ女ならば、他の男の子を使ってこの国を乗っ取ろう──そう考えているのでは。
慎重で、そして正しい思考だ。
アディマは、自分の国の太陽府府長が、馬鹿ではないという事実に大いに満足した。
「我が叔母上が、婚姻の儀の証人だ。いま西翼に来ておいでだから、確認に行くがいい。この婚姻の儀は、父上も御認めになっている」
とどめのとどめ。
この国で、三人だけの正当なイデアメリトス。
その全員が、この異国の娘との婚儀に噛んでいる。
もはや。
府長は、反論出来ないようだ。
リサーは、何か言いたげにこの場の空気を見たが──小さなため息をひとつついただけだった。