アリスズ
☆
違う国の言葉を話すっていうのは、度胸がいる。
景子は、英語の時に十分その難関を味わっていた。
赤ん坊のようなたどたどしいしゃべりを、相手に聞かれてしまうのだ。
照れが、大爆発してしまうのである。
それを、アディマに頼むなんて。
しかし、その機会は遠からず訪れた。
昼時。
休憩も兼ねて、森の中で昼食が始まったのだ。
ダイの担いでいた大きな袋から、干し肉やパンなどの携帯食料が引っ張り出される。
そんな食事中、小さな生き物が現れたのだ。
それは一度足を止め、遠巻きにこっちを見る。
しっぽのないリス、に近いだろうか。
それを見て、アディマが。
「──」
一言だけ、言葉を発したのだ。
何の付属の言葉もない、短い一言。
「──?」
景子は、あっと思って同じように繰り返してみた。
微妙な音が入るので、カタカナに慣れた景子には、少し難しいもの。
アディマが、もう一度繰り返す。
景子は、微妙なところを修正してみた。
アディマが──優しく目を細めた。
及第点だぁぁぁ。
景子は、先生にほめられた子供のように、嬉しさに顔を崩す。
「ふんふん、──」
菊も、ぼそっと口の中で呟いているようだった。
リサーは、非常に複雑な表情でその様子を見ている。
アディマ自らが先生になるというのが、どうにも気に入らないのだろう。
すると。
彼はいきなり立ち上がり、指を差しながら、目につくものを片っ端から発音し始めるではないか。
自分が、アディマの代わりをやろうと思ったのだろう。
しかし、それは。
速すぎて多すぎて、景子の耳に留まるものは一つもなかったのだった。
違う国の言葉を話すっていうのは、度胸がいる。
景子は、英語の時に十分その難関を味わっていた。
赤ん坊のようなたどたどしいしゃべりを、相手に聞かれてしまうのだ。
照れが、大爆発してしまうのである。
それを、アディマに頼むなんて。
しかし、その機会は遠からず訪れた。
昼時。
休憩も兼ねて、森の中で昼食が始まったのだ。
ダイの担いでいた大きな袋から、干し肉やパンなどの携帯食料が引っ張り出される。
そんな食事中、小さな生き物が現れたのだ。
それは一度足を止め、遠巻きにこっちを見る。
しっぽのないリス、に近いだろうか。
それを見て、アディマが。
「──」
一言だけ、言葉を発したのだ。
何の付属の言葉もない、短い一言。
「──?」
景子は、あっと思って同じように繰り返してみた。
微妙な音が入るので、カタカナに慣れた景子には、少し難しいもの。
アディマが、もう一度繰り返す。
景子は、微妙なところを修正してみた。
アディマが──優しく目を細めた。
及第点だぁぁぁ。
景子は、先生にほめられた子供のように、嬉しさに顔を崩す。
「ふんふん、──」
菊も、ぼそっと口の中で呟いているようだった。
リサーは、非常に複雑な表情でその様子を見ている。
アディマ自らが先生になるというのが、どうにも気に入らないのだろう。
すると。
彼はいきなり立ち上がり、指を差しながら、目につくものを片っ端から発音し始めるではないか。
自分が、アディマの代わりをやろうと思ったのだろう。
しかし、それは。
速すぎて多すぎて、景子の耳に留まるものは一つもなかったのだった。