アリスズ
☆
道を外れても、そこは行くべきところだったようだ。
森の中、ダイを先頭に彼らはその木を目指すのである。
近づくにつれ、アディマが瞳を眩しそうに細めてゆく。
「うん、そうだ」
輝く橙色の実をたわわにつけた、威厳ある木だった。
ダイが一度神妙に、自分の眉間に指をあてた後、大きな背を生かして実をひとつもぎ取る。
その実は、アディマに捧げられた。
「ケーコ…これは、太陽の果物だよ」
彼は実を、空に掲げる。
木々の間から入る太陽に、かざそうとしたのだろうか。
そうせずとも、景子の目には眩しいほどだった。
リサーもシャンデルも、木や実を興奮して見つめている。
太陽の果物…ミカンみたいなものかしら。
景子は、とぼけたことを考えていた。
「それ…珍しい?」
菊が、ブツ切り単語で問いかける。
シャンデルが、とんでもないという目で振り返った。
「太陽の果物…──!」
早口でよく分からないが、相当珍しいもののようだ。
「100─1─」
アディマの口から、数字が出てきた。
100? 1?
子供が覚える数字のわらべ歌を習ったおかげで、景子はこの世界の数字を理解していた。
歌わされたのは、シャンデルだったが。
無愛想なまま、しかし、指を折りながら歌ってくれたので、それが数字の歌だと分かったのだ。
100と1
100回に1回、100度に1度──100年に1年。
100年に1回!?
景子の頭の中で、それらしいものとつながって仰天した。
「至上の幸運」
アディマの声で、景子は新しい言葉をまた一つ覚えた。
美しい言葉だった。
道を外れても、そこは行くべきところだったようだ。
森の中、ダイを先頭に彼らはその木を目指すのである。
近づくにつれ、アディマが瞳を眩しそうに細めてゆく。
「うん、そうだ」
輝く橙色の実をたわわにつけた、威厳ある木だった。
ダイが一度神妙に、自分の眉間に指をあてた後、大きな背を生かして実をひとつもぎ取る。
その実は、アディマに捧げられた。
「ケーコ…これは、太陽の果物だよ」
彼は実を、空に掲げる。
木々の間から入る太陽に、かざそうとしたのだろうか。
そうせずとも、景子の目には眩しいほどだった。
リサーもシャンデルも、木や実を興奮して見つめている。
太陽の果物…ミカンみたいなものかしら。
景子は、とぼけたことを考えていた。
「それ…珍しい?」
菊が、ブツ切り単語で問いかける。
シャンデルが、とんでもないという目で振り返った。
「太陽の果物…──!」
早口でよく分からないが、相当珍しいもののようだ。
「100─1─」
アディマの口から、数字が出てきた。
100? 1?
子供が覚える数字のわらべ歌を習ったおかげで、景子はこの世界の数字を理解していた。
歌わされたのは、シャンデルだったが。
無愛想なまま、しかし、指を折りながら歌ってくれたので、それが数字の歌だと分かったのだ。
100と1
100回に1回、100度に1度──100年に1年。
100年に1回!?
景子の頭の中で、それらしいものとつながって仰天した。
「至上の幸運」
アディマの声で、景子は新しい言葉をまた一つ覚えた。
美しい言葉だった。