アリスズ
☆
どう、しよう。
景子は、一人でオロオロしていた。
梅が──妊娠している。
その事実は、喜びよりも先に驚きであり、ついで猛烈な不安となって景子を襲ってきた。
彼女が、誰か男の人と恋仲になっている。
その事実が、問題なのではない。
梅の身体が、子供を産めるかどうか、という健康面の心配だった。
本人には、まだ自覚症状は出ていないようで。
景子の質問を、全て怪訝に返す。
だが、梅にこのことを、どう説明するかと考えた時、彼女は壁にぶちあたった。
そういえば、と。
そういえば、梅や菊には、自分の目のことを言ったことがなかった、と。
アディマは、景子を周囲に納得させるために、魔法を使えると説明したらしい。
その話は、梅や菊の耳にも入っているかもしれない。
だが、具体的にどんな能力かまでは、知られていないはずだ。
妊娠についても、いま説明しなくとも、時がたてばじきに彼女は自覚するだろう。
自分のこの目のことを明かさず、見守っているだけでもいいのではないか。
景子の頭の中で、ぐるぐると思考が回る。
目の前には、梅。
どうかしましたか、という目で、優しく見つめてくれている。
この人の、一生を左右するかもしれないことを、景子は知ってしまったのだ。
健康体の自分でさえ、意識がなくなりかけた出産を、梅がするというのか。
景子は。
両手を、梅の肩にかけた。
「梅さん…」
興奮で、涙がこみ上げそうになる。
ずっと、自分を変な人間だと、思っていた。
日本にいた間、ずっとずっと。
でも、こっちでアディマに出会った。
そこから、たくさんの本当にたくさんの事が動き、変わったのだ。
そう。
梅の命のためならば──知られてもいいではないか。
「梅さんのおなかに…赤ちゃんがいます」
決死の一言。
なのに。
まさか。
梅が微笑むとは。
「まあ…嬉しい」
ふわりと、本当に幸福そのものの微笑みを浮かべるとは。
どう、しよう。
景子は、一人でオロオロしていた。
梅が──妊娠している。
その事実は、喜びよりも先に驚きであり、ついで猛烈な不安となって景子を襲ってきた。
彼女が、誰か男の人と恋仲になっている。
その事実が、問題なのではない。
梅の身体が、子供を産めるかどうか、という健康面の心配だった。
本人には、まだ自覚症状は出ていないようで。
景子の質問を、全て怪訝に返す。
だが、梅にこのことを、どう説明するかと考えた時、彼女は壁にぶちあたった。
そういえば、と。
そういえば、梅や菊には、自分の目のことを言ったことがなかった、と。
アディマは、景子を周囲に納得させるために、魔法を使えると説明したらしい。
その話は、梅や菊の耳にも入っているかもしれない。
だが、具体的にどんな能力かまでは、知られていないはずだ。
妊娠についても、いま説明しなくとも、時がたてばじきに彼女は自覚するだろう。
自分のこの目のことを明かさず、見守っているだけでもいいのではないか。
景子の頭の中で、ぐるぐると思考が回る。
目の前には、梅。
どうかしましたか、という目で、優しく見つめてくれている。
この人の、一生を左右するかもしれないことを、景子は知ってしまったのだ。
健康体の自分でさえ、意識がなくなりかけた出産を、梅がするというのか。
景子は。
両手を、梅の肩にかけた。
「梅さん…」
興奮で、涙がこみ上げそうになる。
ずっと、自分を変な人間だと、思っていた。
日本にいた間、ずっとずっと。
でも、こっちでアディマに出会った。
そこから、たくさんの本当にたくさんの事が動き、変わったのだ。
そう。
梅の命のためならば──知られてもいいではないか。
「梅さんのおなかに…赤ちゃんがいます」
決死の一言。
なのに。
まさか。
梅が微笑むとは。
「まあ…嬉しい」
ふわりと、本当に幸福そのものの微笑みを浮かべるとは。