アリスズ
☆
ダイの手の届く範囲の実を取り、袋を膨らませた一行は、再び元の道へと戻った。
景子は、実以外にいくつかのお土産をもらった。
一つは、太陽の木の枝を一本。
ダイに頼んで、短い枝を小刀で落としてもらったのだ。
そして──食べた果実の種。
継げるかどうか分からないし、種が芽を出すかどうか分からない。
しかし、職業病のようなものだった。
その日の夕刻近く。
いくつめかの町についた。
旅人の彼らを、町の人が次々と振り返る。
理由は分かっていた。
彼らから、甘い匂いがただよっているのだ。
森の道から木まで、結構あったために匂いまでは届かなかったが、すれ違う人々にはよく分かるようだ。
特に、たっぷり抱えて重い思いをしているリサーとシャンデルは、甘い香りの塊みたいなものだった。
「──果物? 売っ──?」
匂いと商売に敏感な男が、リサーに声をかける。
彼は追い払おうとしたが、匂いがたまらないのか、一向に離れようとしなかった。
ダイが、ちらりとアディマを見た。
彼に、何かを期待している視線に感じる。
周囲の人が、増えてゆく。
旅人が、何か珍しいものを持って町に入ってきた。
その好奇心に、群がっているのだ。
ダイが、アディマをかばうように歩いているが、これでは埒があかない。
子供ならざる者は、足を止めた。
そして、周囲を見まわすのだ。
「──果物─店─?」
朗々として高く弦楽器のような声で、アディマは町人の雑音を、一瞬にして止めた。
すると、最初に付きまとった商人らしき男が、最初の強引さは嘘のようにおずおずと手を上げる。
アディマが彼を見ると、射すくめられたように男はびくっとした。
「─果物─売─?」
続けて問うと、男は指を3つ掲げた。
アディマは、それに頷いて。
その後に、リサーとシャンデルを見ると、二人はがっかりと肩を落としたのだった。
ダイの手の届く範囲の実を取り、袋を膨らませた一行は、再び元の道へと戻った。
景子は、実以外にいくつかのお土産をもらった。
一つは、太陽の木の枝を一本。
ダイに頼んで、短い枝を小刀で落としてもらったのだ。
そして──食べた果実の種。
継げるかどうか分からないし、種が芽を出すかどうか分からない。
しかし、職業病のようなものだった。
その日の夕刻近く。
いくつめかの町についた。
旅人の彼らを、町の人が次々と振り返る。
理由は分かっていた。
彼らから、甘い匂いがただよっているのだ。
森の道から木まで、結構あったために匂いまでは届かなかったが、すれ違う人々にはよく分かるようだ。
特に、たっぷり抱えて重い思いをしているリサーとシャンデルは、甘い香りの塊みたいなものだった。
「──果物? 売っ──?」
匂いと商売に敏感な男が、リサーに声をかける。
彼は追い払おうとしたが、匂いがたまらないのか、一向に離れようとしなかった。
ダイが、ちらりとアディマを見た。
彼に、何かを期待している視線に感じる。
周囲の人が、増えてゆく。
旅人が、何か珍しいものを持って町に入ってきた。
その好奇心に、群がっているのだ。
ダイが、アディマをかばうように歩いているが、これでは埒があかない。
子供ならざる者は、足を止めた。
そして、周囲を見まわすのだ。
「──果物─店─?」
朗々として高く弦楽器のような声で、アディマは町人の雑音を、一瞬にして止めた。
すると、最初に付きまとった商人らしき男が、最初の強引さは嘘のようにおずおずと手を上げる。
アディマが彼を見ると、射すくめられたように男はびくっとした。
「─果物─売─?」
続けて問うと、男は指を3つ掲げた。
アディマは、それに頷いて。
その後に、リサーとシャンデルを見ると、二人はがっかりと肩を落としたのだった。