アリスズ
☆
野菜と果物を扱うような店先に到着すると、アディマはもう一度リサーとシャンデルを見た。
しぶしぶ。
彼らは、ようやく自分の重い荷物を下ろし始める。
袋の口が開いた瞬間。
「………!」
果物店の店主は、声もなく固まった。
そして。
ばっと顔を上げた後、猛烈に何かを計算するような動きを始める。
指を何本も上げたり下げたりして、どうやらこの果実に値段をつけている様子だ。
その様子に。
「この村──果物─?」
アディマが、何か問いかけると、店主は一瞬沈黙した。
「──4ダム─」
次に、おそるおそる指を四本立てるではないか。
こくりとアディマが頷くと、リサーが何か言いたてようとする。
明らかなる抗議だ。
それを、彼は手でおしとどめた。
こうなるともう、リサーは何も言えなくなる。
そして、太陽の果実は男の手へと受け渡された。
溢れだす橙色の実に、町人は歓声をあげる。
一斉に、店頭に群がろうとした。
その動きを、バンと男は棚を叩いて押しとどめる。
「この果物は─4ダム─売る─1家に1─」
商売に必要な大声は、アディマとは別の意味で遠くまで通った。
顔を見合わせる町人。
周囲の群衆は、歓声を上げた。
シャンデルは、もはや泣きそうだった。
リサーは、果物屋を見ないようにしている。
そして。
一瞬にして、果物は完売した。
果物屋の男は、町の人間をすべて把握しているのだろう。
誰に売るべきか、きちんと分かっているようだった。
刃物を持ち出し、切り売りをする場面もあった。
そして、群がっていた人々は、みな溢れんばかりの笑顔で家路へと向かうのだ。
残ったのは。
手についた果汁をなめる幸せそうな男と、アディマ一行。
その中で──二人ほど、再起不能状態だった。
野菜と果物を扱うような店先に到着すると、アディマはもう一度リサーとシャンデルを見た。
しぶしぶ。
彼らは、ようやく自分の重い荷物を下ろし始める。
袋の口が開いた瞬間。
「………!」
果物店の店主は、声もなく固まった。
そして。
ばっと顔を上げた後、猛烈に何かを計算するような動きを始める。
指を何本も上げたり下げたりして、どうやらこの果実に値段をつけている様子だ。
その様子に。
「この村──果物─?」
アディマが、何か問いかけると、店主は一瞬沈黙した。
「──4ダム─」
次に、おそるおそる指を四本立てるではないか。
こくりとアディマが頷くと、リサーが何か言いたてようとする。
明らかなる抗議だ。
それを、彼は手でおしとどめた。
こうなるともう、リサーは何も言えなくなる。
そして、太陽の果実は男の手へと受け渡された。
溢れだす橙色の実に、町人は歓声をあげる。
一斉に、店頭に群がろうとした。
その動きを、バンと男は棚を叩いて押しとどめる。
「この果物は─4ダム─売る─1家に1─」
商売に必要な大声は、アディマとは別の意味で遠くまで通った。
顔を見合わせる町人。
周囲の群衆は、歓声を上げた。
シャンデルは、もはや泣きそうだった。
リサーは、果物屋を見ないようにしている。
そして。
一瞬にして、果物は完売した。
果物屋の男は、町の人間をすべて把握しているのだろう。
誰に売るべきか、きちんと分かっているようだった。
刃物を持ち出し、切り売りをする場面もあった。
そして、群がっていた人々は、みな溢れんばかりの笑顔で家路へと向かうのだ。
残ったのは。
手についた果汁をなめる幸せそうな男と、アディマ一行。
その中で──二人ほど、再起不能状態だった。