アリスズ
△
肌を、合わせる。
重くたくましい身体が、菊を抱く。
ダイは、多くを言葉に出来ない。
そんなことは、知っている。
だが、彼は目で、息で、大きな手で、菊に語りかける。
「さすがに…痛いな」
痛みというものに、彼女は他の女性より慣れている。
しかし、自分の身を内側から裂く痛みは、これが初めてだ。
弱音ではなく、ぽろっと素直に感想を漏らしてしまった。
動きが、中途で止まった。
ダイの瞳が、彼女の瞳を覗きこむ。
「大丈夫だよ…」
熱い痛みの中で、菊は微かに笑った。
耐えられないわけではないのだ。
嫌なわけでもない。
ただ。
景子の言葉が、ふっとよぎった。
『私達は随分遠くへ来ましたね』
ああ、本当だ。
あの時は、どこか漠然とそれを聞いていた。
しかし、こうしてダイと身体を重ねようとしていると、すぐそこに、この男の体温を感じると、ひしひしと伝わってくるのだ。
遠くに、来た。
出会うはずのない男と、出会った。
そして。
ああ。
自分が、女だということくらい、ちゃんと知っていた。
だが、今日初めて。
ちゃんと、分かった。
目の前に、戦う身体がある。
戦う男がいる。
身体の芯が、じんじんと痛む中。
そんな男と──唇を交わした。
肌を、合わせる。
重くたくましい身体が、菊を抱く。
ダイは、多くを言葉に出来ない。
そんなことは、知っている。
だが、彼は目で、息で、大きな手で、菊に語りかける。
「さすがに…痛いな」
痛みというものに、彼女は他の女性より慣れている。
しかし、自分の身を内側から裂く痛みは、これが初めてだ。
弱音ではなく、ぽろっと素直に感想を漏らしてしまった。
動きが、中途で止まった。
ダイの瞳が、彼女の瞳を覗きこむ。
「大丈夫だよ…」
熱い痛みの中で、菊は微かに笑った。
耐えられないわけではないのだ。
嫌なわけでもない。
ただ。
景子の言葉が、ふっとよぎった。
『私達は随分遠くへ来ましたね』
ああ、本当だ。
あの時は、どこか漠然とそれを聞いていた。
しかし、こうしてダイと身体を重ねようとしていると、すぐそこに、この男の体温を感じると、ひしひしと伝わってくるのだ。
遠くに、来た。
出会うはずのない男と、出会った。
そして。
ああ。
自分が、女だということくらい、ちゃんと知っていた。
だが、今日初めて。
ちゃんと、分かった。
目の前に、戦う身体がある。
戦う男がいる。
身体の芯が、じんじんと痛む中。
そんな男と──唇を交わした。