アリスズ
☆
食事どころではなくなってしまった。
と、景子は思っていたのに。
「おいしいよ、これ」
死体を片付け、血を洗い流してきた菊とダイは、複雑そうな店主の差し出す料理に、至極当然のように食らいついたのだ。
アディマも、黙々と食事に入っている。
リサーは青い顔をしていたが、それでも気合を入れなおしたように食事を始めた。
なかなか食べ始められないのは、シャンデルと景子。
シャンデルなどは、まだ指が震えているようだ。
うう。
見ちゃった。
景子は、あの呪いの一瞬が頭にこびりついて、食事をする気になれなかった。
壁に散った血よりも、そっちの方がよほど頭に焼きつくのだ。
初めて、景子たちがこの世界に降り立った日に見たのと、同じ呪いに感じた。
しかも、彼らはとても強い人だったに違いない。
あのダイも菊も、気づくのが遅れたのだから。
景子だって、光が見えなければ存在すら分からなかっただろう。
「また、助けられたな」
菊が、日本語で話しかけてくる。
意味など分からないだろうに、ダイも彼女を見た。
アディマも。
「──分かった?」
ダイが、ぼそりと呟くように景子に語りかける。
ああ。
いまのが、何故~? という文法なのかな。
景子の頭は、逃避に向かってまっしぐらだった。
ダイは、何故景子があの敵に気づけたのか。
そう問いかけているに、違いないのだから。
景子は、まだ自分が青い顔をしていることを理解しながら、首を傾げた。
言葉の意味が、よく分からない。
どうして見つけられたのか、分からない。
どっちの意図として、汲んでもらってもよかった。
ただ、アディマを見た。
あの怖い人たちは、この子供ならざる者を狙っているのではないだろうか。
そう、心配に思ったからだ。
しかし。
アディマの景子を見る目の方が──心配そうだった。
食事どころではなくなってしまった。
と、景子は思っていたのに。
「おいしいよ、これ」
死体を片付け、血を洗い流してきた菊とダイは、複雑そうな店主の差し出す料理に、至極当然のように食らいついたのだ。
アディマも、黙々と食事に入っている。
リサーは青い顔をしていたが、それでも気合を入れなおしたように食事を始めた。
なかなか食べ始められないのは、シャンデルと景子。
シャンデルなどは、まだ指が震えているようだ。
うう。
見ちゃった。
景子は、あの呪いの一瞬が頭にこびりついて、食事をする気になれなかった。
壁に散った血よりも、そっちの方がよほど頭に焼きつくのだ。
初めて、景子たちがこの世界に降り立った日に見たのと、同じ呪いに感じた。
しかも、彼らはとても強い人だったに違いない。
あのダイも菊も、気づくのが遅れたのだから。
景子だって、光が見えなければ存在すら分からなかっただろう。
「また、助けられたな」
菊が、日本語で話しかけてくる。
意味など分からないだろうに、ダイも彼女を見た。
アディマも。
「──分かった?」
ダイが、ぼそりと呟くように景子に語りかける。
ああ。
いまのが、何故~? という文法なのかな。
景子の頭は、逃避に向かってまっしぐらだった。
ダイは、何故景子があの敵に気づけたのか。
そう問いかけているに、違いないのだから。
景子は、まだ自分が青い顔をしていることを理解しながら、首を傾げた。
言葉の意味が、よく分からない。
どうして見つけられたのか、分からない。
どっちの意図として、汲んでもらってもよかった。
ただ、アディマを見た。
あの怖い人たちは、この子供ならざる者を狙っているのではないだろうか。
そう、心配に思ったからだ。
しかし。
アディマの景子を見る目の方が──心配そうだった。