アリスズ
☆
ドォンッ!
大砲が炸裂したような大きな音が、後方であがった。
「グギャインッ!」
そして、猛った生き物の叫ぶ悲鳴。
ドスン、バタン、ゴロゴロゴロ。
その生き物は、大きな身体をもんどり打たせるように、斜面を転がり落ちていった。
景子は、側の木の幹にしがみつくようにして身体を止めながら、その光景を信じられないまま見ていた。
「な…なに…?」
ひゅーひゅーぜーぜー。
全然足りていない酸素の中、興奮したままの彼女は、それを何とか音にした。
斜面の上を見上げると、菊が滑るように駆け下りてくるところで。
「大丈夫? 景子さん? 怪我は!?」
手には、鞘ごとの刀を握ってはいるが、抜いてはいない。
コクコクと頷いて、無事を伝える。
菊が、ほぉっと脱力したようにため息をついた。
ダイは、アディマを支えるようにゆっくりと降りてくる。
その後から、残りの二人。
「───!」
怒っているのは、リサーだった。
ダイが顔を顰めるくらい、大きな声で怒りの声をあげている。
早口で、さっぱり聞き取れないが、ダイが怒られるようなことをしたのだろうか。
自分に向いている怒りではないことに、景子が驚くほどだ。
リサーが一行の主なら、彼女などとっくに放り出されているだろうから。
「───」
アディマが、景子の安全を目にしながら、ほっとしたように何かを言う。
そこで、リサーはぐぅと言葉を飲み込まされた。
「ご、ごめんなさい…」
皆が、予定外の道を下ってきたことに、景子は青ざめながら謝りを入れる。
悪いのは獣なのだが、冷静に対応できなかったせいで、余計な手間をかけたことは間違いないのだから。
リサーは、忌々しそうに顔を横に向けた。
「ケーコ…大丈夫?」
まだへたりこんだままの彼女に、アディマが心配そうな声をかける。
あれ?
何だろう。
景子にもうまく説明出来ない違和感が、そこにはあった。
ドォンッ!
大砲が炸裂したような大きな音が、後方であがった。
「グギャインッ!」
そして、猛った生き物の叫ぶ悲鳴。
ドスン、バタン、ゴロゴロゴロ。
その生き物は、大きな身体をもんどり打たせるように、斜面を転がり落ちていった。
景子は、側の木の幹にしがみつくようにして身体を止めながら、その光景を信じられないまま見ていた。
「な…なに…?」
ひゅーひゅーぜーぜー。
全然足りていない酸素の中、興奮したままの彼女は、それを何とか音にした。
斜面の上を見上げると、菊が滑るように駆け下りてくるところで。
「大丈夫? 景子さん? 怪我は!?」
手には、鞘ごとの刀を握ってはいるが、抜いてはいない。
コクコクと頷いて、無事を伝える。
菊が、ほぉっと脱力したようにため息をついた。
ダイは、アディマを支えるようにゆっくりと降りてくる。
その後から、残りの二人。
「───!」
怒っているのは、リサーだった。
ダイが顔を顰めるくらい、大きな声で怒りの声をあげている。
早口で、さっぱり聞き取れないが、ダイが怒られるようなことをしたのだろうか。
自分に向いている怒りではないことに、景子が驚くほどだ。
リサーが一行の主なら、彼女などとっくに放り出されているだろうから。
「───」
アディマが、景子の安全を目にしながら、ほっとしたように何かを言う。
そこで、リサーはぐぅと言葉を飲み込まされた。
「ご、ごめんなさい…」
皆が、予定外の道を下ってきたことに、景子は青ざめながら謝りを入れる。
悪いのは獣なのだが、冷静に対応できなかったせいで、余計な手間をかけたことは間違いないのだから。
リサーは、忌々しそうに顔を横に向けた。
「ケーコ…大丈夫?」
まだへたりこんだままの彼女に、アディマが心配そうな声をかける。
あれ?
何だろう。
景子にもうまく説明出来ない違和感が、そこにはあった。