アリスズ
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夜。
ダイの夜番に、菊も付き合っていた。
そこへ、寝ていたはずのリサーがやってくる。
おいでなすったか。
ダイではなく、自分に近づく彼を、菊はゆるやかに見詰めた。
言われることなど知っているし、とっくに覚悟も出来ているからだ。
リサーが、ちらっと御曹司の方を見る。
よく眠っているのか、確かめているのだろう。
それが、とてもおかしかった。
起きている間に御曹司に聞かれたら、絶対に止められると知っているからだろう。
だから、内密に話を通そうとしているのだ。
先に、ダイがため息をついた。
彼もまた、リサーが何を考えているか分かるのか。
だから。
菊は、手でしゃべり出そうとする男を止めた。
「分かっている」
まだ慣れない、こちらの言葉。
「明日…朝…早く…出る」
単語をつなぎ合わせても、話は通じる。
景子は、だいぶ文章になってきたが、彼女ほど熱心ではない菊はこの程度だ。
リサーは、彼女の言葉に戸惑っていた。
まさか、菊から切りだされるとは、思っていなかったのだろう。
景子にすら分かるほど、ダダ漏れの気をばらまいていたクセに。
御曹司に、何回か言葉を受けていたようだが、それでも彼のそれは治らなかった。
忠義者だな。
彼を、悪者だと菊は思っていなかった。
気楽な菊とは違い、リサーには立場があるのだろう。
主君と客を秤にかけて、客を取る家臣はいないのだ。
御曹司のためにも、景子が邪魔だと判断したのである。
「食べ物…くれ」
当座の食事は、必要だった。
保存食を、担いでいるのはダイだ。
リサーは、ダイに頷く。
彼は、少し重そうに大きな身体を起こすと──荷物を取りに行ったのだった。
夜。
ダイの夜番に、菊も付き合っていた。
そこへ、寝ていたはずのリサーがやってくる。
おいでなすったか。
ダイではなく、自分に近づく彼を、菊はゆるやかに見詰めた。
言われることなど知っているし、とっくに覚悟も出来ているからだ。
リサーが、ちらっと御曹司の方を見る。
よく眠っているのか、確かめているのだろう。
それが、とてもおかしかった。
起きている間に御曹司に聞かれたら、絶対に止められると知っているからだろう。
だから、内密に話を通そうとしているのだ。
先に、ダイがため息をついた。
彼もまた、リサーが何を考えているか分かるのか。
だから。
菊は、手でしゃべり出そうとする男を止めた。
「分かっている」
まだ慣れない、こちらの言葉。
「明日…朝…早く…出る」
単語をつなぎ合わせても、話は通じる。
景子は、だいぶ文章になってきたが、彼女ほど熱心ではない菊はこの程度だ。
リサーは、彼女の言葉に戸惑っていた。
まさか、菊から切りだされるとは、思っていなかったのだろう。
景子にすら分かるほど、ダダ漏れの気をばらまいていたクセに。
御曹司に、何回か言葉を受けていたようだが、それでも彼のそれは治らなかった。
忠義者だな。
彼を、悪者だと菊は思っていなかった。
気楽な菊とは違い、リサーには立場があるのだろう。
主君と客を秤にかけて、客を取る家臣はいないのだ。
御曹司のためにも、景子が邪魔だと判断したのである。
「食べ物…くれ」
当座の食事は、必要だった。
保存食を、担いでいるのはダイだ。
リサーは、ダイに頷く。
彼は、少し重そうに大きな身体を起こすと──荷物を取りに行ったのだった。