アリスズ
☆
こんな土で、無理をして同じ穀物を作るから。
ひとつの土地で、延々同じ作物を作ると、こういう症状が起きる。
土の中の微生物や、土の質が偏りすぎて土そのものを殺すのだ。
景子は、輝ききれていない植物を見た。
これでは、本来の実りは期待できないだろうし、既に年々収穫は減っているはずである。
おばさんは、景子の言葉に何度も首を傾げた。
言っている意味が、うまく伝わらないのだろう。
微生物と言っても、この国の人には見えないのだから、理解してもらえるはずもない。
自分が、随分と恵まれた技術国から来たことを、こんなところで思い知るだけなのだ。
ただ。
おばさんは、困ったようにため息をついた後、それでも景子に「ついておいで」と言ってくれたのである。
多分、自分の手に負えない人間だと思ったのだろう。
そのまま村に入ると、いきなり多数の子供に囲まれた。
旅人が、珍しくてしょうがないのだろう。
「あっちへおいき!」
おばさんの声で、蜘蛛の子たちは散り散りになる。
「にいさん、にいさん、少し話を聞いておくれ」
おばさんは、とある家の扉のノッカーを、カンカンと打ち鳴らした。
のそり。
扉が開くと、頭のてっぺんから顎まで、全ての毛がつながったような中年の男が現れる。
一瞬、ハイジのおんじが現れたかと思ったが、まだそこまで年はいってないようだ。
おばさんを一度見た後、景子たちに怪訝な目を向ける。
「この子が畑─土が危ない──」
本人も余り飲み込めていないように、首をかしげながらおばさんは彼に説明した。
男の目が、むぅと寄った。
「畑、たくさん…出来てない?」
景子は、疑問形で語りかける。
農村ならきっと、税金を作物で収めているに違いない。
だから、収穫量くらいは把握しているはずだ。
男の表情が、深く深く曇った。
どうやら──心当たりがあるようだった。
こんな土で、無理をして同じ穀物を作るから。
ひとつの土地で、延々同じ作物を作ると、こういう症状が起きる。
土の中の微生物や、土の質が偏りすぎて土そのものを殺すのだ。
景子は、輝ききれていない植物を見た。
これでは、本来の実りは期待できないだろうし、既に年々収穫は減っているはずである。
おばさんは、景子の言葉に何度も首を傾げた。
言っている意味が、うまく伝わらないのだろう。
微生物と言っても、この国の人には見えないのだから、理解してもらえるはずもない。
自分が、随分と恵まれた技術国から来たことを、こんなところで思い知るだけなのだ。
ただ。
おばさんは、困ったようにため息をついた後、それでも景子に「ついておいで」と言ってくれたのである。
多分、自分の手に負えない人間だと思ったのだろう。
そのまま村に入ると、いきなり多数の子供に囲まれた。
旅人が、珍しくてしょうがないのだろう。
「あっちへおいき!」
おばさんの声で、蜘蛛の子たちは散り散りになる。
「にいさん、にいさん、少し話を聞いておくれ」
おばさんは、とある家の扉のノッカーを、カンカンと打ち鳴らした。
のそり。
扉が開くと、頭のてっぺんから顎まで、全ての毛がつながったような中年の男が現れる。
一瞬、ハイジのおんじが現れたかと思ったが、まだそこまで年はいってないようだ。
おばさんを一度見た後、景子たちに怪訝な目を向ける。
「この子が畑─土が危ない──」
本人も余り飲み込めていないように、首をかしげながらおばさんは彼に説明した。
男の目が、むぅと寄った。
「畑、たくさん…出来てない?」
景子は、疑問形で語りかける。
農村ならきっと、税金を作物で収めているに違いない。
だから、収穫量くらいは把握しているはずだ。
男の表情が、深く深く曇った。
どうやら──心当たりがあるようだった。