蜜柑寮より愛を込めて
序章
「あら、あなたこんな所でどうしたの??」
公園の散歩道で、うずくまる女に、年配の女性が声をかけた。
女は、女性を見上げた。
「…具合でも悪いの??」
女性の言葉に、女は首を横に振る。
「まぁ、いいわ。あそこのベンチに座りましょう。」
女性は、女の肩を抱き寄せ、大丈夫よという感じに、女の頬にふわりと触れた。
2人は、空いていたベンチに腰をかけた。
「…あ…たし―…」
女が口を開く。
「…就職が決まらなくて…今日、5つ目落ちたんです…。」
女の目から涙がこぼれた。
「もう…どうしたらいいのかわからなくて―…」
ひっくと女が肩を振るわせる。
それを見て、女性は女を優しく抱きしめた。
「…大丈夫よ。あなた誠実そうだし、きっと仕事決まるわ。」
「…む…無理ですっ。もう…もう―…。」
「…。」
女性は、泣きじゃくる女の顔を両手で包むと、くいっと上を向かせた。