蜜柑寮より愛を込めて
決まりの説明の後に、明菜は寮についてもいくつか話していた。
「あ。それでね、寮生は5人で、5人とも…。」
そう言いかけて、秋菜は腕時計をちらりと見た。
「あらやだ。もう4時近いわね。もう少し早くあなたを呼ぶのだったわ。もっと話たかったのに。まぁ、仕方ないわね。
-柚実さん。今日が初仕事よ。早く寮に行って、学生が帰ってくる前においしい夕ご飯を作ってあげていて。」
秋菜は、柚実の肩にぽんっと手をのせた。
「あなたなら大丈夫。頑張って。」
秋菜の笑顔。
柚実はこの笑顔に弱い。
つい、自分の顔も緩んでしまう。
「はい。」
◆+◆+◆+◆+◆
学長室を出て、柚実は、門に向かっていた。
「寮への行き方は、門の所の受付で聞いてちょうだい。」と秋菜に言われたからだ。
秋菜さん…素敵な人だなぁ。
あんな綺麗で若いのに学長だなんて…。
憧れちゃう。
柚実は、そんなことを思いながら歩く。
柚実が卒業した専門学校の校長は、かなりハゲのきていたおじいちゃんだった。
その校長と秋菜を比べるとかなりのギャップで、より秋菜が素晴らしく見える。
いつか、あたしも秋菜さんみたいなかっこいい素敵な女性になりたい。
そう思うほどだ。