蜜柑寮より愛を込めて
黒いさらさらの髪に整った綺麗な顔、それから、引き締まった体。
男の鋭い瞳が柚実を捕らえる。
「ちょちょちょっとっ。あ…あなた何なの!?」
柚実は、一歩下がりながら言う。
「は?あんたこそ何?」
男は、さらに柚実を睨む。
「……誰から鍵取った?」
(…鍵??)
「…ま、どうせ麗滋(レイジ)だろう。全く、あいつにも本当に困ったもんだな。」
男は、大きくため息をつく。
そして、ゆっくりと柚実のもとに歩いて来た。
柚実は…じりじりと後ろに下がる。
―トンッ…
背中が廊下の壁に当たった。
男の手が柚実に伸びる。
「ひっ。」
柚実は、小さく悲鳴をあげた。
男は、左手を柚実の後ろの壁につき、柚実を見る。
そして、右の手のひらを出して言った。
「鍵…返して。」
「―ッッ…。」
あまりの迫力に柚実は動けない。