蜜柑寮より愛を込めて

「…さっさと皿よこせよ。」

淕は、柚実に手を差し出す。

「あ。え…は、はいッッ!!」

視線をずらしたまま、柚実は、皿を差し出した。

すると、次の瞬間…柚実の手から、皿がするりと抜けた。

「あ。」

―ガッシャーン!!

「…。」

真っ赤な柚実の顔が、みるみる青くなっていく。

「ごご、ごめんなさい。」

一瞬にして割れた皿。

柚実は、あわてて、ほうきとちりとりを取りに行こうとした。

すると、淕が柚実の手をとった。

「!??」

(なななな何!?????)

「…足。」

淕の瞳が柚実の足を見る。

「え??」

柚実が自分の足を見ると、薄っすらと血がにじんでいた。

どうやら、割れた皿の破片があたったらしい。

「片付けは俺がやるから、お前は、ばんそうこうでも貼りに行け。」

「で、でも…。」

「いいから。」

淕が柚実の手をさらに強く握った。

真剣な瞳…。

―ドクン

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