蜜柑寮より愛を込めて
―パッ
その時、キッチンの明かりが消えた。
「終わったー。お前ら誰か手伝いに来いよなぁ~。」
首と肩をぐりっと回しながら淕がリビングにやってきた。
ちなみにこの蜜柑寮は、キッチン、ダイニング、リビングがひとつの部屋のようにつながっている。
「あ。えっと…ありがと。淕…。」
柚実は、淕の方を向くとお礼を言った。
―『淕』…柚実が、この寮で唯一自己紹介なしで、名前のわかる男だ。
「お…おう…。」
淕やみんなが驚いたように柚実を見た。
(ん…??)
「…淕は自己紹介してないのにわかるんだね~★」
啓がにやりと笑って言った。
その言葉に柚実の顔が赤くなる。
「えっ。やっ…み…みんなが『淕』っていっぱい呼んでたから!!」
…そうだよッッ。
みんなが淕の名前いっぱい呼んでたから!!
…うん…。
柚実は、心を落ち着かせるために、ふぅーと息を吐いた。
「ま。いいや。ほらっ。淕、自己紹介。」
麗滋が淕をうながす。
「俺は、高林淕(タカバヤシ リク)。21。お前とタメだな。」
「そ…そっか。よろしく。」
(淕…タメかぁ…。)
柚実は、なんだか嬉しくて顔がにやけてしまった。
「さ~て、最後は君の自己紹介ッッ。」
麗滋の一言で、みんなの視線が柚実に向けられる。