蜜柑寮より愛を込めて
柚実はだんだんと怖くなってきた。
公園で声をかけてくれたあの女性は、本当にこの学校の学長なのだろうか。
本当に騙されてはないだろうか。
柚実の頭の中で、それらの言葉がぐるぐる回る。
それもそのはずだ。
5回目の面接に落ちたあの日、柚実は、女性と雇用の約束をした。
女性の経営している学校の寮で働くと。
しかし、その約束はかなり簡単なものだった。
1枚のメモを渡され、今日、荷物をまとめてここに来るように。
住み込みで働いてもらうから。
そう言われただけ。
履歴書も書いていない。
こんな風に仕事を決めることは普通ないだろうに。