蜜柑寮より愛を込めて
ふぅー。
柚実は大きく深呼吸をした。
そして、両手でパシンと頬を叩く。
弱気になっちゃだめ!!
せっかく、就職が決まったんだもの。
頑張らなくちゃ。
柚実は、元気を付けたい時や、気合いを入れたい時に、良く深呼吸をして頬を叩く。
柚実なりの心の作り方だ。
柚実は、手に持っていた荷物を再度持ち直した。
「あの…。」
「はい。なんでしょう?」
柚実は、門のところにある受付にいる男性に声をかけた。
「…学長先生にお会いしたいのですが。」
「学長に??お約束はされていますか??」
「えっと…蜜柑寮の調理員で…。」
柚実がそう言うと、男性は、「ああ」という感じで頷いた。
「お話は、学長から聞いております。」
男性は、柚実のことを聞いていたようだ。
…あのおばさんは、本当にこの学校の学長なんだ。
良かった。
騙されたわけじゃない。
柚実は、ほっとして胸をなで下ろす。