蜜柑寮より愛を込めて
開かれた扉から部屋の中へ入る。
柚実の目の前には、大きなガラスの窓が広がっていた。
そして、その窓から外を眺めるようにして、1人の女性が立っている。
「では、私はこれで…。失礼致します。」
受付の男性がそう言って、部屋の扉をしめると、女性は、くるりと向きを変え、柚実を見た。
「いらっしゃい。来てくれてありがとう。」
女性は、にっこりと笑った。
「本当は、来てくれないんじゃないかってドキドキしてたの。公園で会って、名乗りもせずに、ただメモを渡しただけだったから。怪しすぎるものね。」
女性はくすっと笑いながら言った。
確かに…と、柚実は思った。
「…でも、公園で知らない人に、悩み相談をした私も私ですよね…。」
柚実の言葉を聞いて、女性は「そうね。」とまた笑った。
「…本当に私たちお互いのこと知らないわよね。まずは、自己紹介といきましょうか。私は、ここで学長をしている、和田秋菜(ワダ アキナ)というの。よろしくね。」
「あ。はい。よろしくお願いします。私は、中野柚実っていいます。」
「柚実さん…かわいらしい名前ね。」
秋菜はまたにっこり笑った。
秋菜さんは、なんて素敵に笑う人なんだろう。
秋菜のセレブな雰囲気と美しい仕草に柚実はどきりとした。