「・・・あぁ」

真選組など目じゃない。

「明日から行ってもらう。準備しておけ」

「・・・了解」

高杉に言われ自室に戻るが、紅桜には私物がほとんどないから準備する必要はなかった。

コンコン

自室にノックの音が響く。

「誰だ」

「あたし」

ふすまを開け、入ってきたのは鬼兵隊でもうひとりの唯一の女、来島また子だ。

「どうした?」

「桜、あんた明日行くんだろ、今日はあんたと話そうと思って」

「ふ。何改まってる?別にすぐに帰る。真選組潰してくるだけだ」

また子は優しい子だ。

「・・・ちゃんと帰ってこいよ」

「あぁ、当たり前だ」

「あたし、あんたのこと待ってるから」

また子は二人しかいない女の間でよく仲良くしてくれた。

また子は可愛い。

さびしそうな目が私をとらえる。

こんな子を一人置いていけるか・・・。

「帰ってきたら団子屋でも行こう。もちろん私のおごりだ、また子」

「あぁ!待ってる」

「ならもう寝ろ。もう遅い」

「悪い。朝、あたしの部屋によってけよ。最後に挨拶してーし」

「・・・ばかもの。最後というな」

「わっ悪い」

「まぁ、許してやる。それじゃ、早く寝るんだぞ?」

「あぁ」

また子は少し涙のたまった目をこすり、ふすまから出て行った。

「・・・真選組を潰して、すぐに戻ってくるから」


◆◇◆◇◆◇◆◇


翌朝、まだ早い時間に私は自室をでた。

まだまた子は寝ているだろう。

私はまた子の部屋の前に置き手紙を残し高杉の自室へと向かった。

「・・・行ってくる」

「ずいぶん軽い荷物だな」

「ふ、当たり前だ。荷物など刀と着替えしかない」

「ククク。それもそうだな」

「・・・晋助・・・私が帰って来なかったらどうする」

「どうゆう意味かわかんねぇ―な」

「私が、死んだら・・・」

「死なねーよ、おまえは。

 死ねねんだよ。俺が殺さない限りはな」

「ふ、そうだな」

なぜあんな質問をしたのか自分でもわからない。


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