でも、私は気にしている余裕がなかった。

「・・・生きて帰ってこい」

高杉がそう言い、一瞬間唇が塞がれたから。

ほんの一瞬の出来事。

「・・・晋助・・・?」

「・・・おまえが帰って来なかったらどうするという質問の答え

 はそうなったときにしかいわねぇよ」

「・・・」

「アホ見てぇな顔してねーでさっさと行け」

「あっあぁ」

私は珍しく動揺していて高杉の自室からあせりながら出て行った。

「・・・さっさといかねーと、離れたくなくなっちまうだろ・・・」

高杉は苦しそうに呟き、私が正門から出ていくのを静かに自室から見送った。

なぜ、あの時高杉は口づけをしたのか。

私にはとても考えられなかった。

これが普通の女なのか・・・?


◇◆◇◆◇◆◇◆


真選組屯所、入り口前。

潜入、か。

高杉に潜入しろという命令されたのは初めてだ。

いつもは高杉の傍で

隣で人を斬ってきた。

初めてだ。

隣にいた高杉がいない。

傍に居たまた子もいない。

当たり前だったことがあたりまえじゃなくなる。

ただそれだけなのに。

昔の私なら・・・。

全然平気だったんだけど・・・。

「あれー、お客さんですか?」

黒髪の青年が笑顔で近づいてきた。

「・・・あ。私は真選組に入隊したい」

「え!?君、女の子じゃない?」

「そうだが」

「んー・・・俺に言われてもな・・・・あ、副長!!!!!!」

その青年は副長と呼ばれる男に駆け寄った。

「・・・あ、おまえ」

「貴様が副長か」

「きっ貴様!?」

「あ、悪い・・・。私の悪い癖だ」

「あ、そっそうか・・・」

「それでですね副長。この子、真選組に入りたいみたいなんです」

「はぁ!?何言ってんだ山崎」

「ほっ本当なんですって」

副長と呼ばれる男は私を見た。

「んでー・・・どうなんだ、おまえ」

「そのつもりだ」

「馬鹿言ってんじゃねぇ。女は戦場で足手まといだ」

「・・・ふ」

「なっ何笑ってんだ!」

「いや、なんでもない」

こいつ、私のこと知らんのか?

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