「綺麗だし真面目だからあたしの息子のお嫁さんになって欲しいくらいだわ」

「そんなことないよ、おばさん」

私みたいな汚い女。

「うんうん、桜ちゃんは美人さんだよ」

「・・・ありがとう」

おばさんはいつもニコニコしていて、幸せそうに息子の話をしてくれる。

この話を聞くのがすきだ。

お母さんがもし生きてたらこんな風に私の話をしてくれるのか・・・。

このおばさんの話を聞くのが私のつかの間の幸せだ。


「・・・すいません」


1人の男が入ってきたらおばさんは

「ちょっと待って下さいね」と行って台所に小走りで走っていった。

このなれている感じからして常連さんなんだろう。

団子を持っておばさんが戻ってきた。

「はい、土方さん」

そう言って男の人に団子を渡した。

『土方さん』

どこかで聞いたことのあるような名前の気がしたけど、思い出せない。

男を見ているとすぐに気付かれた。

「・・・なんだ?」

「・・・別になんでもない。失礼した」

「・・・」

土方という男は変なものを見るような目でこちらを見ていたが気にしなかった。

「おばさん、勘定ここに置いとく」

「あら、もう帰っちゃうの?もっと話しない?」

「・・・悪い、今日は帰る」

「・・・そう、残念だわ。また来てね」

「あぁ。お団子おいしかった」

帰る時また土方と目が合ったけど視線をそらし気にしないであるいた。

「なぁ、ばーさんあいつ誰だ?」

「あの子は紅桜ちゃんっていうのよ」

「紅桜?」

どっかで聞いたことある、気がする・・・。

「真面目でいい子なんだけど、なんでかいつも悲しそうな顔をしてお団子を食べるの」

「・・・」

「お仕事が大変なのかしら」

「あいつは何の仕事をしてるんだ」

「さぁ、わからないわ。でも大事な仕事をしてるって言ってたわよ」

「・・・大事な仕事ねぇ」

紅桜・・・。

思い出せねえ・・・。

そういえば最近刀を持った凄腕の女が幕府の兵たちを荒らしてるって言ってたな・・・。

・・・・紅桜?

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