たしかその女「紅い桜」って呼ばれてる。

血だらけになりながらも華麗に仕事をこなし、

どんな窮地に立っても負けることはない。

鬼兵隊に所属していてる女は2人しかいないはず・・・。

紅い弾丸の来島また子と紅い花の女がいる。

「・・・ッチ」

紅桜か?

「どうしたの?土方さん?」

俺がいきなり舌打ちしたのを驚いたのか・・・。

あいつのさっきの目、そこいらの浪士の目よりも鋭かった。

吸い込まれそうな鋭い視線にこの俺が戸惑いを見せた。

「・・・いかれてやがる」

土方は小さく呟きながら、ため息を漏らした


◆◇◆◇◆◇◆


そのころ、私は町はずれの墓地に来ていた。

「母さん、父さん。今年も来た」

毎日、毎日、ここへくる

何にも用がないのにここへくる。

なんで、ここにくると悲しい気持ちになるのだろうか。

感情などとうの昔に捨てられたはずなのに・・・。

父さんや母さんは今の私を見ればなんというだろうか。

人を斬る。

世界を壊す。

大切な人を殺したこの世界に終わりを告げる。

もし、私が普通の女で普通に働き、

普通に恋愛をしていたなら

父さん、母さんはなんというだろうか。




「あれー?さっきの小娘じゃないですかぃ」

小娘。

それは私のことか?

「・・・貴様は誰だ」

私は己の刀の柄に手を置き、声のするほうへと気配を向けた。

「そんな睨まれちゃかなわねーな」

私が見ていたほうと正反対のほうから声がする。

私が逆を突かれる、そんな甘っちょろい剣士ではないはず・・・。

いままでいくつもの戦を通り抜けてきた。

だから気配に気づくことも当然できるはずなのに

どこぞの男に逆をつかれた。

これほどの屈辱はない。

私は自分の下唇きつく噛み

「・・・何者だ」

するどく吼えた。

「俺がわからねーんですかぃ?」

< 7 / 16 >

この作品をシェア

pagetop