「・・・私は用のない人を覚えてやれるほど暇じゃないんだ。用がないなら帰る」

「ちっとまちな」

「・・・私は貴様と遊んでる暇はない」

「はぁ、こんな町娘に命令される義理はねーんでぃ」

男は林の中から出てきた。

「貴様は」

江戸で絡まれている町娘を助けてたときに勘違いして話しかけてきた男。

「思い出したー?」

「・・・ふっ、あぁ」

私は鼻で笑い「それで用は何だ」と問いただす。

「あぁ~用はねぇ」

「は?」

「ただまた会うなんて偶然にしてもできてるなーと思って」

「・・・なら帰る」

「おまえいつも辛そうな顔してねー」

「・・・貴様に言われる義理はない」

だいたい今日会ったばかりだろ。と私は苦笑いをした。

「まぁ、あんたの事情なんて俺は知ったこっちゃねーがな」

「そうか」

ならなぜそんなことを言う?と聞く気にもなれないので私は適当に聞き流した。

「あんた名は?」

「・・・貴様に名乗る必要はない」

「本当冷てぇ女だな」

「別に何と言われようと名乗る気はない」

「あんた、町女か?」

「なぜ貴様にそんなこと答える義理がある」

「いやーこんな女みたことねーし」

「町の女はすべて把握しているのか?」

「そんなはずねーだろぃ。ただこんなおもしれそうな獲物に会ったのは初めてだ」

「私は獲物じゃない」

「ふ、俺からしたら獲物だ」

こんな女っておとした時おもしれんだよなー。と男はあやしく笑っていた。

「あんた、俺のことわかってんの?」

俺こうみえても江戸じゃモテるんだぜ?と男は笑って見せる。

「貴様など知らぬ」

「ふーん、俺は沖田総悟だ」

「なぜ名乗るんだ?」

「別にいいだろぃ。俺が名乗ったんだ。あんたも名乗れ」

「なっ」

「いいだろぃ?」
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