本当、勝手な男だ。

私は貴様の名前など聞いていない。

私は心の中でそう呟きながらも

「・・・桜」

高杉が町では『桜』って名乗れって言っていた。

素性がばれてしまう可能性があるからだ。

「あんたの名前?」

「・・・あぁ」

「ふーん、名乗ってんじゃん」

「きっ貴様が名乗れと」

「最初は貴様に名乗る気はないとか言ってたわりに案外簡単におちたな~」

沖田はつまらなそうに言うと

「もっと楽しめるとおもたんだけどなー」と残念そうにつぶやいた。

「おとすとはどういう意味だ」

「あぁ?案外簡単に心許したな、おまえ」

「・・・私は心など開いていない」

「もうお前に興味ねーよ。帰っていいぜ」

「・・・そうか、なら帰らせてもらう」

なんなんだこの男は。

私は少しはだけた浴衣をひるがえし高杉のもとへと帰った。

「・・・本当にかえんのかよ」

沖田は「はぁーまだ全然心開いてねーじゃん」と呟き

「でも、名前聞けただけで十分だ」

屯所へと帰っていった。

沖田はなぜ墓地へと来たのかそれは沖田のただの気まぐれか。

それとも・・・。
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