二人だけの秘密
ホテルから得意先までは車で数分の距離にあった。

得意先担当の営業マンが車で迎えに来てくれた。


「ああ。おはようございます。
久しぶりだね安藤ちゃん。」
この営業マン、松木さんはもうすぐ定年を迎えるの。
この田舎のエリアを担当している。
たまに仕事で絡むことがあってよくしてくれるお父さんみたいな人。

「おはようございます。
宜しくお願いします松木さん。
今日は本社の人も一緒なんです。
こちら澤辺さんです」

「あっ。本社の人だね。どもどもこんな田舎にわざわざ~」

「いやぁ~。いいところですよね。
私出張で色々まわってますがこんなところ始めてです。
今も安藤さんと観光して帰りたいねって話してたんですよ。」
澤辺さんはそう言って私を見た。

「そうなんです。もう一泊して観光したいね。
なんて話してたんですよ」

「ほんと是非観光して欲しいよ。
いいところだから。めったに来ないでしょこんなところ。
温泉もあるしね。いいよ~」
松木さんはそう言いながら車へ向かった。

澤辺さんは助手席に乗り、私は後部座席に乗って
車は出発した。


前では二人が今日の得意先の話とか
システムの事とか
このプロジェクトの裏話とか
あとこのあたりの観光名所とか
けっこう盛り上がっている。


澤辺さんって
誰とでもすぐに打ち解けちゃうのね。

パッと見は生真面目そうに見えるけど
喋るとすんごいフレンドリーな人。
私も最初ビビってたけど
お笑いの話で大笑いしている澤辺さんを見て
ギャップに驚いたもんね。




「安藤ちゃん~
ここだよ。着いたよ」
松木さんは先に車から降りた。


「安藤さん。頑張って時間までに終わらせようね。」
澤辺さんは振り返って私に言った。

「はい。頑張りましょう!」


そんな事言いながら
私は
タイムリミットに間に合わなくて今日帰れなくなったらいいのにな・・・。
なんて少し考えてたんだ。


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