短編:星夢
「ダメ」
そう、呟いた。
それだけで、彼は
悲しそうな子供の顔をする。
それを、拒めなかった。
一枚のドア。
その向こうでは、
まだみんなが楽しげに話してる。
なのに、私は
美波に抱きしめられている。
いつも冷静な心が
焼けるように熱くて
何も考えられない。
「授業中いつも、目にとまるのは詩花だった」
彼の話を私は黙って聞いていた。
「白い首に、黒い髪がよく似合ってて」
「俺はすぐ詩花に惹かれたのに」
「詩花は他人に興味ない顔で」
「そんなお前が、笑ってた」
「学園祭で、笑ってた」
「ホントに可愛いなって、思った」
私を抱きしめる腕が緩まって
美波がまた、私を見る。