偽りの誓い


友達が私の肩を掴んでくるけど


「どうにもならない事だってあるんだよ」

呟くように言ってゆっくりとその手を離す。




どうにもならない事だってあるの。


この世のすべての人が

叶う恋をしているばかりじゃない。




「由亜・・それでも」

「じゃあ私はどうすればよかったの?」


どうすればいいのよ。


結婚式を止める度胸もなければ


彼の胸に飛び込んでいく勇気すらない。


「これでいいのよ。」


そう、これでいい。

これで何もかもうまくいくの。


あの人もきっと


「翔だってきっとそう思ってるはず」


お待たせしました、ホテルの人にそう言うと、差し出された手を
握って席を立つ。



「由亜!!」

「ごめん、ごめんね。でも私、大丈夫だから」


私は強いんだもの。

だから大丈夫。




翔も祝福してくれたもの。


あの日に

「おめでとう」

そう笑顔で

あたしを優しく抱きしめてくれた。






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